なぜダイバーシティ推進策が意図せざる結果を生み出してしまうのか

昨今、多くの企業が、自社組織のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を促進するためのダイバーシティ推進策を実施しています。ダイバーシティ推進策が狙いとするところは、企業におけるマイノリティ従業員(女性や少数人種、少数民族など)の数を増やすことで「ダイバーシティ」を高めること、マイノリティ従業員が被るキャリア上の不公正や不利益(差別や阻害)を是正し「エクイティ」を高めていくこと、そしてマイノリティ従業員を組織に包摂することで「インクルージョン」の度合いを高めることです。しかし、企業が行うダイバーシティ推進策が、意図せざる結果を招いてしまうことがしばしば報告されています。Leslie (2019)は、なぜ企業のダイバーシティ推進策が意図せざる結果を生み出してしまうのかの既存の研究などを整理した上で、そのメカニズムを理解するための統合モデルを構築しました。

 

Leslieによれば、企業が行うダイバーシティ推進策には、組織内においてアンコンシャス・バイアスをなくしていくよう働きかけるような非差別的施策(ターゲットを特定しない施策)、特定のマイノリティ従業員に対する支援や機会を高めたりするリソース的施策(ターゲットが明らかになっている施策)、そして、ダイバーシティの達成状況を監視し、それに対して責任を持とうと働きかける責任施策などに分かれ、これらは、マイノリティ従業員に対する差別や不利益を是正し、組織内でのマイノリティ従業員の割合を高めていくことを狙いとしています。しかし、これらのダイバーシティ推進策は、推進主体としての組織のリーダーが意図していなかったようなシグナルを従業員に送ることになり、そのシグナルを感じ取った従業員がそれに反応することで、もともとダイバーシティ推進策が狙いとしていたこと(リーダーが意図していたこと)とは異なる結果をもたらしてしまうのだとLeslieは論じます。

 

Leslieのモデルでは、ダイバーシティ推進策がもたらす意図せざる結果を、それがネガティブなものかポジティブなものか、意図していたものに影響を与えるものか、意図していなかったことに影響を与えるものかによって4つに分類しています。1つ目は、「バックファイヤー(裏目)」というもので、ダイバーシティ推進策が逆にマイノリティ従業員への風当たりを強めてしまったりマイノリティ従業員の数を減らしてしまったりとダイバーシティ推進を阻害してしまう結果を指します。2つ目は「ネガティブな波及」で、これはダイバーシティ推進策がターゲットとしていないマジョリティ従業員のエンゲージメントを下げてしまうような意図していないものへの影響を指します。1つ目と2つ目は、ダイバーシティ推進策が生み出す意図せざるネガティブな結果です。3つ目は「ポジティブな波及」で、逆に、ターゲットとしていないマイノリティ従業員のエンゲージメントや倫理観を高めるといった影響を指します。4つ目は「間違った進歩」で、本質的な改善を伴うことなく、形だけ目標数値が達成されていくような状況を指します。3つ目と4つ目はダイバーシティ推進策が生み出す意図せざるポジティブな結果です。ただし4つ目は見た目だけポジティブで本質的にはポジティブといえません。

 

では、Leslieの統合モデルを用いて、ダイバーシティ推進策がどんな(意図せざる)シグナルを従業員に与え、その結果、どんな意図せざる結果が生み出されるのか説明しましょう。ダイバーシティ推進策が発するシグナルには4種類あります。1つ目は、「マイノリティ従業員は支援を求めている」というシグナルです。重要なのは、本当はマイノリティが支援を求めているかどうかは不明だし、組織のリーダーもそれを意図しているわけではないということで、あくまで、ダイバーシティ推進策を知った従業員がどのようなシグナルを感じ取っているかということなのです。組織の従業員がこのようなシグナルを感じ取ると、彼らは、マイノリティ従業員は脆弱であるという印象を持ってしまい、それが逆にマイノリティ従業員の実力も低いというバイアスにつながり、彼らに対する差別や、彼らのパフォーマンスを阻害してしまうのです。つまり、ダイバーシティ推進策が、「マイノリティ従業員は支援を求めている」というシグナルを介して、意図せざるバックファイヤー(マイノリティ従業員に対する差別やパフォーマンス低下を促進し、ダイバーシティ推進を阻害する)結果になってしまうというのです。

 

ダイバーシティ推進策が与える2つ目のシグナルは、「マイノリティ従業員はこれから成功していくだろう」というものです。つまり、組織としてマイノリティ従業員を優遇し、マイノリティ従業員に優先的に機会を与えていくというシグナルであるわけです。これを受け取ったマジョリティ社員は、自分達の成功や機会が抑制されると感じ、この推進策が自分達の犠牲のもとに成り立っているという逆差別感、不公正感を抱くようになります。これは、マジョリティ従業員が組織に対するエンゲージメントを下げてしまう原因にもなるし、マイノリティ従業員に対してネガティブなイメージをもち、敵対的になったり辛く当たったりすることにもつながります。つまり、ダイバーシティ推進策が、「マイノリティ従業員はこれから成功していくだろう」というシグナルを介して、意図せざるネガティブな波及(マジョリティ従業員のエンゲージメントの低下)やバックファイヤー(マイノリティ従業員に対する差別やパフォーマンス低下)につながり、ダイバーシティ推進を阻害してしまうのです。

 

ダイバーシティ推進策が与える3つ目のシグナルは、「当社は倫理観を大切にしている」というものです。これはまず、ダイバーシティ推進とは関係なく、マジョリティ従業員の倫理的な行動の促進につながっていきます。つまり、意図せざるポジティブな波及が起こりうるということです。一方、倫理性を大切にするというシグナルは、「表立ってはマイノリティ従業員を差別しない」というマジョリティ従業員の心理状態を高め、それは逆に、表立たない程度に些細な形でマイノリティ従業員を差別するという行為につながる可能性を高めます。ただ、些細な形の差別であっても、マイノリティ従業員に大きなダメージを与えうることはわかっているので、意図せざるバックファイヤーにつながるわけです。つまり、ダイバーシティ推進策が、「当社は倫理観を大切にしている」というシグナルを介して、意図せざるポジティブな波及(マジョリティ従業員の倫理的行動を高める)やバックファイヤー(マイノリティ従業員に対する差別やパフォーマンス低下)につながるのです。

 

ダイバーシティ推進策が与える4つ目のシグナルは、「ダイバーシティ目標を高めていくことに価値がある」というものです。これは、ダイバーシティを高めるということが外発的動機付けとなり、「見た目のダイバーシティを高めていけさえすれば良いだろう」という発想につながってしまいがちです。外発的に動機付けられたマジョリティ従業員は、とりあえずマイノリティ従業員を昇進させておこう、といったように場当たり的もしくは小手先の方法で形だけダイバーシティを高めようとするので、実質的な改善を伴わない間違った進歩を招いてしまうのです。外発的動機付けは、内発的動機付けを阻害してしまう効果もあるので、マジョリティの従業員は、本質的に組織のダイバーシティの課題を改善していこうとする内発的動機を持たなくなってしまいます。つまり、ダイバーシティ推進策が、「ダイバーシティ目標を高めていくことに価値がある」というシグナルを介して、意図せざる間違った進歩(見た目だけダイバーシティを高め、実質的な改善を伴わない進歩)につながるのです。

 

さて、企業が行うダイバーシティ推進策にも色々ありますが、特定のマイノリティ従業員に対する支援や機会を高めたりするリソース的施策が多く含まれたダイバーシティ推進策は、「マイノリティ従業員が支援を必要としているから、マイノリティは優遇され、ゆえに当社で成功する」という強いシグナルを発することになりがちです。そうすると、意図せざるバックファイヤー(マイノリティ従業員に対する差別やパフォーマンス低下を促進し、ダイバーシティ推進を阻害する)や、意図せざるネガティブな波及(マジョリティ従業員のエンゲージメントの低下)を誘発し、ダイバーシティ推進を阻害してしまう可能性を高めると言えます。一方、組織内においてアンコンシャス・バイアスをなくしていくよう働きかけるような非差別的施策(ターゲットを特定しない施策)が多く含まれたダイバーシティ推進策の場合には、「当社は倫理観を大切にしている」というシグナルを強く発することにつながり、それが意図せざるポジティブな波及(マジョリティ従業員の倫理的行動を高める)をもたらすと同時に、意図せざるバックファイヤー(マイノリティ従業員に対する差別やパフォーマンス低下)にもつながると言えます。

 

さらに、ダイバーシティの達成状況を監視し、それに対して責任を持とうと働きかける責任施策が多く含まれている場合、「ダイバーシティ目標を高めていくことに価値がある」というシグナルを強く発するので、意図せざる間違った進歩(見た目だけダイバーシティを高め、実質的な改善を伴わない進歩)につながると言えます。今回説明したようように、ダイバーシティ推進策が、意図せざる結果につながる可能性と、なぜそうなるのかのメカニズムを組織のリーダーがあらかじめ知っておくことは、そういった意図せざる(とりわけネガティブな)結果を防ぎつつ、ダイバーシティ推進策が本来狙いとしている意図的な結果につなげるためのマネジメントを行う上で重要だと考えられます。

参考文献

Leslie, L. M. (2019). Diversity initiative effectiveness: A typological theory of unintended consequences. Academy of Management Review, 44(3), 538-563.

 

女性活躍推進が簡単には進まないメカニズム

日本の企業社会はかつてから男性社会だと言われ、ジェンダーギャップ指数においても世界中で最下層グループに属するなど、社会的に重要なジェンダー平等については不名誉な立場にあります。その挽回の狙いも含め、女性活躍推進の動きは加速しつつあるように思えます。しかし、世界全体で見てもとりわけ企業社会は男性優位の社会であることは間違いなく、労働者の割合的に男女が均衡している場合でも、管理職やトップに近づくほど女性が少ないという現状があります。ジェンダー平等が簡単には実現されない理由の根幹には、私たちが男性や女性を判断する際の心理的な働きである「ステレオタイプ」というものがあります。ジェンダーに関するステレオタイプが、いわゆる「アンコンシャス・バイアス」につながり、それが女性差別などにつながっていると考えられます。Heilman, Caleo & Manzi (2024)は、ジェンダーステレオタイプがバイアスや差別につながるメカニズムを以下の通りモデル化して解説しています。

 

Heilmanらの理論モデルでは、「男性はこうだ」「女性はこうだ」というように男女が本来有しているとイメージされる特徴を示す「記述的ステレオタイプ」と、「男性はこうあるべきだ」「女性はこうあるべきだ」という男女のあるべき姿や社会的な行動規範を示す「規範的ステレオタイプ」の2つがあります。それぞれが別ルートをたどって人々のバイアスのかかった評価や判断につながり。それがジェンダー差別を生み出すとされます。まず、「男性はこうだ」「女性はこうだ」という記述的ステレオタイプは、ビジネスや企業社会における職業や地位などのステレオタイプと比較され、その人が特定の職業や仕事に合っているか、向いているかがバイアスがかかった形で判断されがちです。女性の場合、特定の職業や仕事が男性的な特徴を持っているために、その仕事とフィットしないと判断され、その結果、採用時の判断、仕事での評価、昇進ための評価などで男性よりもネガティブに評価・判断され、それが女性が昇進できないといったガラスの天井などの差別につながります。

 

もう少し詳しく説明しましょう。記述的ステレオタイプの代表例は、男性は主体的であり、女性は共同的であるというものです。主体性のイメージをブレイクダウンすると、競争力がある、野心的である、支配的である、勤勉である、自立している、といった特徴が含まれます。共同性のイメージをブレイクダウンすると、温かみがある、倫理的である、誠実である、忠実である、気配りできる、社交的であるといった特徴が含まれます。大事なことは、特徴が異なるといっているだけで男性のステレオタイプがこのましく、女性のステレオタイプが好ましくないということではないということです。男性にも女性にもネガティブなステレオタイプがあります。例えば、男性のステレオタイプには、高慢、攻撃的、自己中心的といった特徴が、女性のステレオタイプには、受動的、文句が多い、媚を売るといった特徴があります。また、男性には共同性が欠けている、女性には主体性が欠けている、というステレオタイプもあります。重要なのは、特定の職業や地位、とりわけ社会的な地位が高い職業などに男性的なステレオタイプが張り付いているケースが多いために、男性とのフィット感が強く、女性とのミスフィット感が強くなりがちであるということです。

 

例えば、企業のトップ層、軍隊、科学・技術・工学・数学(STEM)、起業家などは、男性的なステレオタイプが付随しています。なぜならば、例えば企業のトップ層や起業家の仕事は、主体的で、権力志向・支配的で、野心的、自立、自信家といったイメージがありますし、STEMは男性が得意な科目であるというイメージがあります。軍隊も競争的で肉体的で力強いというイメージがあります。このような職業に女性が就くと、職業のステレオタイプと女性のステレオタイプがマッチしないために違和感を抱いてしまいます。単に男性ばかりで女性が少ないという職場でも、職場イメージが男性的ですから、そこに少数の女性が混じると、普通ではないという印象を与えてしまうのです。このようなミスフィット感によるバイアスの影響が強く出てしまうのは、その職業や仕事における評価基準が曖昧なときです。例えば、企業の採用、業績評価、昇進決定などにおいて、その基準が仕事の出来栄えや能力といったように明確であるならば、その基準によって判断すれば、男女間で大きな実力差がなければ、男女平等になるはずです。しかし、評価基準が曖昧な状況では、主観が大きく働いてしまい、(しばしばアンコンシャスに)女性はこの仕事とフィットしていないと思っているから「その女性は能力が低い、仕事ぶりが良くない、向いていない」という判断になってしまうわけです。

 

次に、ステレオタイプがバイアスや差別につながるもう1つのパスである、「男性はこうあるべきだ」「女性はこうあるべきだ」という「規範的ステレオタイプ」が影響するメカニズムについて説明しましょう。これについては、例えば、女性はこのように行動すべきだ(控えめであるべきだ、人当たりが良いべきだ、気配りができるべきだなど)といった規範的ステレオタイプに沿った行動を女性がとらない場合、その女性は社会的な規範に違反していると判断され、罰を受けることになります。これはバックラッシュと呼ばれます。同様に、女性はこのように行動すべきでない(野心的であるべきでない、断定的であるべきでない、威圧的であるべきでないなど)という行動を女性がとると、その女性も社会的な罰を受けます。また、男性的な職業や仕事において女性が活躍するだけでも、(しばしばアンコンシャスなレベルで)女性は活躍すべきでないという規範的ステレオタイプが発動して社会的に罰せられます。例えば、成功するための行動に男性的なイメージがつきまとう企業のトップマネジメントに女性が登り詰めてかつ成功を収めると、その女性は、女性がするべきことをせず、女性がするべきでないことをして成功したというようなバイアスによって否定的に捉えられ、嫉妬や妬みの対象にもなりやすくなります。能力を発揮して成功すると女性らしくないと批判され、能力を発揮できないと女性だから成功しないと批判されるような状況はダブルバインドと言われます。

 

以上をまとめると、ジェンダーに関する記述的ステレオタイプは、それが男性的なイメージがこびりついた多くの職業や仕事とのミスフィット感を生み出し、それが女性をネガティブに評価するバイアスにつながって実際に女性差別が生じるというメカニズムが存在します。一方、ジェンダーに関する規範的ステレオタイプは、女性がその職業や仕事に求められる行動をしたときに、女性がするべき、するべきでないという社会規範に沿った行動をしていないと判断され、それが女性を不当に扱う差別につながるというメカニズムが存在します。これらがあちこちで起こっているために女性活躍推進を妨げる障害として働くわけです。では、このようなメカニズムの理解を、女性活躍推進にどう活かしていけば良いでしょうか。それには、記述的・規範的ステレオタイプがバイアスや差別につながるメカニズムは、職業、仕事、職場の特徴や、仕事上求められる行動に男性的なイメージがつきまとっていることが大きな原因なので、それを取り除いていくことが肝要となります。例えば、単純に職場の女性の数を増やすだけでもその職場の男性的なイメージが払拭されていきます。また、それらの職業や仕事を記述するときに男性的な表現を使わない、逆に、女性的な要素を加えていく、といった方法も考えられます。さらに、採用、業績評価、昇進判断などでより客観的で明確な基準を設け、ステレオタイプが入り込む余地をなくしていくことも重要でしょう。

 

また、女性自身が、バックラッシュダブルバインドから自分の身を守るために、男性的なイメージのある行動と、女性的なイメージのある行動をうまく使い分け、適宜印象操作も行いながら、バランスをとっていくというのも考えられます。女性だけがそのような苦労をしなければいけないというのは理不尽かもしれませんが、男性社会がすぐには変化しない中で活躍していく女性が増えることで、結果的に男性社会の撲滅に寄与していくためには有効な行動だといえるかもしれません。

参考文献

Heilman, M. E., Caleo, S., & Manzi, F. (2024). Women at work: pathways from gender stereotypes to gender bias and discrimination. Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior, 11, 165-192.

 

TEDで学ぶ組織行動論(21)エイミー・エドモンドソン 「他人同士の集まりをチームに変える方法」(日本語字幕付き)

TED Conferenceとは、TED(Technology Entertainment Design)が主催している講演会で、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物がプレゼンテーションを行なう場です。講演会の内容はインターネット上で無料で動画配信されており、多くの著名な人物もここでプレゼンテーションを行っています。

 

今回は、ハーバードビジネススクール教授のエイミー・エドモンドソンによる「他人同士の集まりをチームに変える方法」の動画を紹介します。エドモンドソン氏は、「心理的安全性」の概念を提唱し世に広がた研究者として日本でも有名です。本動画では、エドモンソン氏が「チーミング」について解説しています。チーミングは、安定的に仕事をする「チーム」とは異なり、前例のない緊急のあるいは非日常的な問題を解決するなどの目的で人々が迅速に集まるプロセスを指します。チーミングは複雑化する現代社会や現代ビジネスにおいてますます重要になっているとエドモンソン氏は論じ、チーミングを成功させるポイントを解説します。そこには「心理的安全性」の重要性も含まれているのです。

 

プレゼンテーション動画は日本語字幕つきです。再生時に字幕がでない場合には、動画の下の字幕ボタンを押してください。

 

www.youtube.com

 

参考文献

エイミー・C・エドモンドソン (2021)「恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす」英治出版

 

生命科学から学ぶダイバーシティ・マネジメント

高橋(2021)は、生命科学の研究者として、そしてベンチャー企業の経営者として、「生命の原理や原則を客観的に理解した上で、それに抗うことで主観的な意志を生かして行動できる」と説きます。そうすれば、自然の理に立脚しながらも希望に満ちた自由な生き方が可能になるというのです。今まさに新型コロナウイルスと戦っている時代の真っただ中にいますが、私たちの世界では次々と課題が現れます。そのような世の中で絶望しないために、課題を解決し続ける状態を維持することが大切だと高橋は言います。次々に現れる課題に諦めず、思考して行動することで、人類は常に前進することができるのだというのです。

 

高橋は、このような考え方を、予測不能な未来に向けて組織を存続させるにはどうすればよいかについても展開させています。つまり、これまで変化を前提としながら進化し、生存してきた生命に関する知識を、組織や会社づくりに応用することで学べることは多いというのです。高橋が自らの会社経営で参考にしていることの1つは、「多様性の本質は同質性にある」ということです。一見矛盾した命題ですが、何が違うかという差異に注目すると同時に、何が同じかという点にも注目しないと、多様性(ダイバーシティ)の本質を見失うことになるというのです。

 

高橋によれば、多様性を考えるには、差異の前提となる土台が必要です。それが同質性ということになりますが、企業でいえば、まずはある目的を達成したいと考える「同質性」を持つものをまず集め、多少の環境変化にも対応できる手段として多様性を確保するというのが本来の意味での多様性のありかただといいます。すなわち、企業にとっての目的とは、企業理念や企業文化に賛同した人たちとともに社会的価値を生み出していくことであり、その目的に賛同しているという「同質性」を前提(土台)として、年齢・性別・国籍・人種などに関係なく、異なる才能や背景を持つ人たちが集まることこそが真の意味での多様性(ダイバーシティ)だというわけです。

 

また、生物における多様性の本質は、多様な生物種があることで生命全体として生存確率を上げていることだと高橋は説明します。どのような環境変化があるのか、あるいはどのような変異が環境に適応できるのか、事前に予測したり意図をもって作り出したりすることはできないため、とにかくあらゆる可能性を試すしかないということです。ある種が絶滅するなどの失敗を寛大に許容し続ける生命の様子は「失敗許容主義」と表現できるといいます。多様性を作り出すことや失敗許容主義は、短期的にみると非効率的な戦略に見えますが、長期的には効率の良い生存戦略となると高橋は論じます。これは企業が生き残る戦略のヒントとなるでしょう。

 

さらに、生命において変化する方法は2つあり、1つは「個体としての成長」で、もう1つは「種としての進化」ですが、これは企業にとっての「既存事業の売上増」と「新規事業の立ち上げ」の2つの手段とよく似ていると高橋は指摘します。事業は一定期間順調に成長しても、S字曲線が示すように、生命の仕組みでは個体は無限に成長せず、やがて老いていくのと同じように、単体事業で成長し続けることはなく、事業には寿命があります。よって企業は、新規事業の立ち上げを通じて新たなものを作り出し、多様性を維持することが、全体の生存確率を高めることにつながるというのです。

 

そして高橋は、空間軸や時間軸における多様な視点を使い分けること、客観的な情報を大切にしつつも主観を重視することの重要性を唱えます。まず、生物は「個体として生き残り、種が繫栄するために行動する」という特徴から視野が狭くなりがちであること、そして私たちは脳の学習機能によってどうしても過去の経験に影響を受けがちであることを指摘し、純粋に物事を受容する「フラットな視点」を持つこと、広くも狭くも自由に視野を設定する能力を身に着けることが重要だといいます。

 

経営に関して言えば、経営理念やミッションは滅多に変化させてはならない一方で、戦略や戦術は状況に応じて短期間で柔軟に変えていくことが可能です。また、新しい技術や戦術を導入するのにかかる時間と、組織体制を変えるのに必要な時間は異なります。つまり、企業にも複数の時間軸が存在するので、その前提に合わせて動いていく必要があると高橋はいうわけです。また、組織内や取引先との認識のずれや意思疎通での問題は、思考枠としての視野が共有されていないことによることが多いので、視野を共有すればほとんどの問題は解決するといいます。

 

そして、ビジネスにおいて客観的な情報は必要だが、特に不確実性の高い環境であればあるほど、過去の情報から客観的に予測する際のエラーが大きくなり、客観的情報の積み重ねだけではたどり着けない未来があるため、主観的な判断が重要になるのだと高橋は論じます。企業経営においてきわめて重要なビジョンやストーリーは、主観から生まれるものであり、新たな課題に対しては新たなストーリーを示し続けることが課題解決のために不可欠であると高橋は主張するのです。

参考文献

高橋祥子 2021「ビジネスと人生の「見え方」が一変する 生命科学的思考」News Picks Publishing

 

ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を実現するためのベストプラクティスとは

近年は、企業経営におけるダイバーシティインクルージョン(D&I)の重要性が世界的に強調されるようになってきました。しかし、日本ではまだまだ、ダイバーシティインクルージョンは進んでいないようにも見受けられます。今回は、ダイバーシティと比べると比較的新しい概念であるインクルージョンに着目して、インクルーシブな組織にするためのベストプラクティスについて解説したいと思います。その前に、そもそもダイバーシティインクルージョンと並列して使われることが多いこの用語ですが、ダイバーシティインクルージョンはどう違うのかについて明確にしておこうと思います。


Ferdman (2014)によれば、ダイバーシティとは、簡単にいえば「組織や職場において、複数のサブグループや文化的背景を持った人々が共存していること」だといえます。これには、国籍、年齢、人種、性別、価値観、文化、宗教、教育、スキルなど、様々な要素が含まれることでしょう。そして、ダイバーシティを意識するということは、すべてのサブグループに属する人々が平等に扱われること、そして少数派などに対する差別がないことということになります。しかし、ダイバーシティが高いということだけでは、それが組織の生産性や企業業績につながるとは言えません。実際、ダイバーシティが高いということは、企業業績から見るとポジティブな影響もネガティブな影響もあるわけです。それに対してインクルージョンは、いかにダイバーシティを組織、職場、個人にとってポジティブな成果に結びつけるかという視点を重視しています。


インクルージョンとは、簡単にいえば「ダイバーシティが高い組織や職場において、人々が真に結びつき、関与し合い、自らが持っている違いを最大限に生かしきれている状態」だとFerdmanはいいます。すなわち、ダイバーシティが有している「違い」が、認識され、尊重され、活用されているような状態であることであり、個人の視点から見れば、自分が組織や職場やそこでの仲間にフルに受容され、尊重され、ゆえに所属意識が高く、なおかつ、自分が他の人たちと違っているというユニーク性を犠牲にすることなく、むしろそのユニークさが尊重され、感謝され、そのユニークさによって組織や職場に貢献できているという状態であると言えます。この状態は、例えば、いくら組織のメンバーに受容されて同じメンバーとして扱われていたとしても、その状態を維持するために多数派が持っている価値観などに従うことが必要となり、自分のユニークさを抑制しなければならないような状態とは異なります。


では、組織はいかにしてダイバーシティを推進するだけでなくインクルージョンを高めることができるのでしょうか。インクルージョンを実現するためには、組織構造、組織の文化(価値観や行動規範)、風土やチームワーク、リーダーシップ、集団および個人の行動など、すべての要素が相互に働き合いながらインクルージョンが推進されていくことが求められます。トップマネジメントのみあるいは特定の部署のみが旗振りをしているだけでは実現しません。このように、組織全体ですべての利害関係者が関与することによって、インクルージョンを実現するために必要な要素、その要素を実現するために必要な施策、制度、行動を、特定し、それを実施していくことが重要となります。ここでは、そのようなプロセスで特定されるインクルージョンの要素の一例として、Ferdmanによる、インクルージョン経験の例示を紹介します。これは、インクルーシブな組織では、メンバーはどのような経験をするのかを整理したものです。


Ferdmanが提唱するインクルージョン経験の6要素は、インクルージョンのベストプラクティスを考えるうえで有用でしょう。1つ目は、組織のメンバーが、組織や職場が物理的かつ心理的に安全であると思えることです。つまり、誰もが、危険な目に合わない、差別されたり攻撃されたりしない、安心して自分の意見が言える、などの状態です。2つ目は、組織や職場の活動に参加、関与できている、あるいはエンゲージメントが高い状態です。例えば、組織のリソースに容易にアクセスでき、仕事や活動において他のメンバーを信頼でき、あるいは他のメンバーから信頼され、活動にフルに参加し従事できる状態であることです。3つ目は、組織や職場において尊敬され、感謝されていることです。これは、自分がこの組織や職場で存在価値があるのかという問いに答えることでもあります。4つ目は、組織や職場の意思決定に参加し発言し影響を与えることができるかということです。5つ目は、自分のユニークな特徴を表現でき、それを仕事や活動に活用できるということです。つまり、組織や職場で「自分らしさ」を維持できるかということです。6つ目は、組織や職場でダイバーシティが認識され、意識され、賞嘆されているかということです。メンバー全員が、ダイバーシティを大切にしているということです。


ダイバーシティが高まった組織や職場で働くメンバーが、上記の6つの要素に代表される経験をすることができる組織や職場を作り上げることができれば、インクルージョンの高い状態が実現することになります。インクルージョンが高まれば、ダイバーシティが真に組織や個人にとって成果をもたらすもの、価値の高いものとなることでしょう。

多文化チームの創造性を促進する多文化インサイダーと多文化アウトサイダー

多国籍チームや多文化チームと聞くと、様々な国籍の人々が集まったチームであると単純に考えてしまわないでしょうか。しかし、忘れてはいけないのが、多文化人材です。例えば、確かに、多文化チームと言えば、日本人、アメリカ人、ドイツ人、中国人、アルゼンチン人といったように、単一国、単一文化出身の人が集まっているでしょうが、同時に、中国系アメリカ人とか、フランス人とマレーシア人のハーフとか、日本人でも帰国子女とか、中には複数の文化的背景を合わせもつ人もいることでしょう。Jang (2017)は、多文化チームのパフォーマンス、とりわけ新しい知識を生み出すという創造性の発揮に重要な役割を果たすのが、こういった多文化人材であることを主張します。しかし、話はそう単純ではありません。


Jangは、多文化チームにおける多文化人材の役割を「文化的仲介機能」と捉えており、異なる文化的背景に基づく異なる視点や情報がチーム内で交差し結びつくことを多文化人材が促進することでチーム全体の創造性を発揮させるという視点に着目します。つまり、創造性というのは、異なる知識や情報が組み合わさって生じるものなので、異なる文化の人々がもっている視点や情報をうまくつなぎ合わせることに貢献できる人がいれば創造性を高めることができるというわけです。しかしJingは、多文化人材には2種類の異なる人材がおり、1つ目は多文化インサイダー、2つ目は多文化アウトサイダーだといいます。そして、この2つの種類の多文化人材は、異なる方法で文化的仲介機能を果たすことで創造性発揮に貢献するというのです。


多文化インサイダーと多文化アウトサイダーは現実には簡単に2分されるわけではないのですが、分かりやすい例を出すと、中国人やアメリカ人がいる多文化チームの中に、中国系アメリカ人がいると、その人は多文化インサイダーです。これは、中国系アメリカ人という多文化人材は、グループ内の中国人ともアメリカ人とも文化的背景を共有しているからです。それに対して、同じように中国人やアメリカ人がいる多文化チームの中に、ドイツ人とインド人のハーフの人がいるならば、その人は多文化アウトサイダーです。ドイツ人とインド人のハーフは、中国人やアメリカ人とどちらとも文化的背景を共有していないからです。まず、単純にインサイダーとアウトサイダーとの区分で考えるならば、インサイダーのほうがチームメンバーから受け入れられやすく、溶け込めやすいと言えるので、より多文化チームの創造性に貢献することができると考えられます。しかし、Jangは、もし、多文化人材が公式なリーダーであったりファシリテーターであるなど文化的仲介機能としての明確な役割が与えられている場合には、インサイダーやアウトサイダーの違いは重要でなくなると論じます。


もっと重要なことは、多文化インサイダーと多文化アウトサイダーの文化的仲介機能の中身が違うことです。多文化インサイダーは、統合(integrating)という多文化仲介機能を用います。それに対して、多文化アウトサイダーは、導出(eliciting)という多文化仲介機能を用います。多文化インサイダーが多用する統合は、多文化人材が、自分の頭の中で異なる文化的視点を結びつけるような機能です。多文化インサイダーの場合、それぞれのチームメンバーがもつ異なる文化に精通しているので、異なる文化的背景の人たちの意見や考え方をどちらも理解することができます。例えば、中国人はアメリカ人の思考や発想がよくわからない。アメリカ人は中国人の思考や発想がよくわらない。しかし、中国系アメリカ人は両方ともわかるので、お互いの視点を咀嚼したうえで組み合わせて考えることができる。お互いの文化からくる視点を組み合わせて新しいアイデアを生成し、それをチームメンバーに投げかければ、異なる文化を仲介して新しい知識を生み出すことに貢献できるのです。


一方、多文化アウトサイダーが多用する導出は、多文化人材が、異なる文化的背景を持つ人々に対していろいろと質問をしたり確認を求め、それぞれの思考や言いたいことをクリアにしていくことで、お互いの理解を促進し、知識の交差と結合に貢献する仲介方法です。つまり、多文化人材の頭の中で複数の知識や情報を結びつけるのではなく、多文化人材の外で、異なる文化的背景を持つ人同士が複数の知識や情報を結びつけるのを助けるわけです。その理由は、多文化アウトサイダーはチームメンバーの文化のどれとも共有できていないので、他のメンバーの思考や発想がよくわかりません。しかし、多文化人材ですから、異なる文化に対応する能力、異なる文化の人々とつきあるスキルを持っています。よって、そういった多文化スキルを発揮して、「第三者」としてお互いの言いたいこと、思考様式、発想の内容などを聞き出して、クリアにし、お互いが対話することが可能になるまでに知識や情報を昇華させることで創造性に貢献するわけです。


Jangは、上記のような理論および仮説を、2つの実証研究(アーカイブおよび実験)によって検証しました。アーカイブ研究では、数年間にわたって開催が続いた40か国の学部生や大学院生が参加したコラボレーションプロジェクトによる多文化チームのアーカイブデータを用いて、多文化人材の有無と、多文化インサイダー、多文化アウトサイダーの区別を行い、それぞれのチームの創造性に関する評価得点がそれらの変数からの影響を受けているかの統計分析を行いました。実験研究では、実験的環境の中で多文化インサイダーもしくは多文化アウトサイダーがいる多文化チームを人為的に作り出してタスクを実行してもらい、多文化人材の行動や創造性を評価するという方法をとりました。2つの実証研究により、Jangの提唱する理論や仮説はおおむね支持されました。Jangの研究は、多文化チームにおける多文化人材の異なる文化的仲介機能に焦点をあてて創造性を高めるメカニズムを明らかにした点で学術的貢献度や実践的含意が高いものといえるでしょう。

参考文献

Jang, S. (2017). Cultural brokerage and creative performance in multicultural teams. Organization Science, 28(6), 993-1009.

「和して同ぜず」のダイバーシティ理論

近年、わが国でも、ダイバーシティインクルージョンという言葉が使われるようになりました。これは、人材の多様性を維持し、それぞれの個性を大切にする(ダイバーシティ)と同時に、少数派を阻害したりすることなく全員を包摂するあるいは全員の意見を尊重する(インクルージョン)ことを意味します。これは、一人ひとりの視点から見ると、孔子の「和して同ぜず(仲良くすれども、自分の立場・意見はきちんと維持する)」に通じるものがあります。「ダイバーシティインクルージョン」にしても、「和して同ぜず」にしても、理想的なダイバーシティ・マネジメントとは何かについて1つの答えを示すものであるといえましょう。つまり、組織としての一体感、統一感、調和性を重視しながらも、メンバー個人間の相違や一人ひとりのユニークさを最大限に活用するようなマネジメントということです。


必ずしも孔子の「和して同ぜず」と同じ意味とは言えないのですが、ダイバーシティインクルージョンで関連する理論に、「最適相違理論(Optimal Distinctiveness Theory (ODT)」というものがあります。つまり、ダイバーシティにおいて一人ひとりが異なっている度合いや特徴には、バランスの取れた最適な状態があるという理論です。そもそも、私たち人間は、相異なる2つの欲求を持っており、その折り合いをつけることが求められます。それは、「他者から受容されたい、他者と同じ(一緒)でいたい」という欲求と、「他者と違っていたい、自分自身は自立したユニークな存在でいたい」という欲求です。つまり「所属欲求(need for belongingness」と「自立欲求(need for uniqueness)」です。 本来は人間にはこの両方の欲求があるはずですが、日本の教育についてはどちらかというと前者の「皆と同じ、同調、相互依存」が強調され、アメリカの教育では後者の「個性、ユニークさ、自立」が強調されているともいわれます。


Shoreら(2011)は、上記の2つの欲求に基づく最適相違理論を用いて、とりわけ「インクルージョン」に関連する理論的枠組みを提示しています。Shoreらの定義する「インクルージョン」は、「メンバーが、組織やグループから、所属欲求と自立欲求の両者が満たされるような扱いを受けることによって、当該組織またはグループにおける価値ある一員として知覚できる度合い」となります。当然、組織によっては、このインクルージョンの度合いには違いがあるのですが、Shoreらはその違いを、所属欲求が満たされる度合い(高・低)と、自立欲求が満たされる度合い(高・低)とのマトリクスによって、4つのタイプの状態に分類しています。


まず、メンバーの所属欲求も自立欲求も満たされる理想的な状態が「インクルージョン」です。最適相違理論でいうところの最適な相違が実現しているような状態です。すべてのメンバーが、組織のインサイダーとして扱われ、かつ各人の個性や違いが尊重されている状態を指します。これと正反対なのが、特定のメンバーの所属欲求も自立欲求も満たされない状態で、これは「エクスクルージョン(排除・除外)」と呼びます。これは、組織のインサイダーがいる一方で、特定の人々がアウトサイダーとして除外された位置づけにあり、彼らの個性や違いが尊重されていない状態を指します。この2つは、もっとも理想的か、もっとも悪い状態かという意味では分かりやすい対比だといえましょう。


それに対し、メンバーの所属欲求は満たされるが自立欲求は満たされない状態が「アシミレーション(同化・吸収)」と呼ばれるものであり、メンバーは全員が組織やグループのインサイダーとして扱われますが、組織やグループに支配的な文化や方針に同調することが求められ、メンバーの個性や自立は尊重されないような状態を指します。多くの日本企業が国内で外国人従業員を雇用していますが、おそらく、外国人の人々には、日本的な職場文化や仕事のやり方への同調を求めるという意味でのアシミレーションの状態にある職場が多いように思います。一方、メンバーの所属欲求は満たされないが自立欲求は満たされる状態が「ディファレンシエーション(差異化)」と呼ばれます。これは、特定の人々が組織のインサイダーとしては扱われず、アウトサイダーのような立場で扱われているが、彼らのユニークさ、個性や自立は尊重されるというものです。このような場合、アウトサイダーの人々は自分自身の特徴は発揮できますが、組織やグループへの帰属意識は育たないでしょう。


Shoreらのフレームワークは、「ダイバーシティインクルージョン」を考慮したダイバーシティ・マネジメントを行う上で、現状がどのような状態であり、理想的な状態に持っていくためにはどのような施策を行えばよいのかを考える際に役立つと思われます。

参考文献

Shore, L. M., Randel, A. E., Chung, B. G., Dean, M. A., Holcombe Ehrhart, K., & Singh, G. (2011). Inclusion and diversity in work groups: A review and model for future research. Journal of Management, 37(4), 1262-1289.