2020-01-01から1年間の記事一覧

組織設計の人事経済学「番外編」ーデジタルトランスフォーメーションはテイラー主義を復権させるのか

今回は、本ブログの人事経済学シリーズのうち「組織設計の人事経済学」の番外編として、デジタルトランスフォーメーション(DX)が、組織設計、職務設計、そして人々の働き方に与える影響について考えてみたいと思います。例によって、ラジアー & ギブズ (…

組織設計の人事経済学3ー最適な職務設計を通じて人材と組織のパフォーマンスを最大化する

本ブログの人事経済学シリーズでは、人材や組織が経済合理性の原則にしたがって行動することを前提に、優れた人材の獲得と活用を可能にする人事管理と、人材活用の制約条件となりうる組織構造の効果的な設計を通じた組織のパフォーマンスの最大化について理…

組織設計の人事経済学2ー経済合理性に基づいた組織デザインでパフォーマンスを最大化する

企業は、優れた人材を獲得し、それらの人材を活用することで組織のパフォーマンスを最大化しようとします。しかし、企業が優れた人材を活用して組織パフォーマンスの向上につなげられるかどうかを左右する大きな制約条件として、「組織の構造」が挙げられま…

組織設計の人事経済学1ー組織パフォーマンスを最大化する意思決定構造

人事管理で重要なのは、自社にとって必要な人材を獲得し、その人材を活用して企業業績を最大化することです。そのために、過去の人事経済学シリーズでは、募集と採用選考、教育投資と人材維持、そして報酬・昇進・評価について解説を行ってきました。しかし…

ワーク・ライフ・バランスを議論する前に理解するべき「ワーク・ライフ・イデオロギー」

wlb

ワーク・ライフ・バランスは日本でもかなり前から議論がされてきました。しかし、ときどき議論がかみ合わなくなることがあります。例えば、そもそもワークとライフはバランスさせるものではない、というような意見が出てくる場合です。これはそもそも、ワー…

経営の本質は「山岳地帯での探検」である2:「両利きの経営」はどのような環境で必要とされるのか

OT

前回の記事では、凹凸地形という概念とNKモデルを紹介し、企業経営の本質が「山岳地帯での探検」であるというメタファーを紹介しました。これは、パフォーマンス(業績)を山に例え、その山々を「視界の悪い山岳地帯」だと理解し、企業は視界のわるい山岳地…

経営の本質は「山岳地帯での探検」である1:凹凸地形概念とNKモデルの紹介

OT

企業や組織の経営の本質は複雑性との闘いといっても過言ではないでしょう。確かに、戦略、組織、人事、マーケティング、会計、ファイナンスなど、経営学には様々な分野があり、それを一通り学ぶことで企業経営の知識を身に着けることはできるでしょう。しか…

上司から嫉妬されたらパワハラの犠牲者になってしまうのか

ob

古くからあることわざに「能ある鷹は爪を隠す」というものがあります。「出る杭は打たれる」といったように、能力があることによって目立ったり嫉妬の対象となることで攻撃されることをあらかじめ防ぐための処世術の一種だと考えられます。しかし、能力がな…

報酬・昇進・評価の人事経済学3ー人材の努力を最大化する昇進制度

通常の人事管理では、昇進というのは、適材適所を実現するための手段として捉えるのが一般的です。つまり、特定のポジションに最適な人材を企業内外から見つけ出して当てがうということです。しかし、昇進は、報酬の増加を伴う上方向の移動であるという点も…

報酬・昇進・評価の人事経済学2ー成果主義報酬設計の基本原則

前回の報酬・昇進・評価の人事経済学1では、企業の人材も損得勘定のみで行動することを前提に、企業が従業員から努力を引き出すためのインセンティブ設計の基本について解説しました。今回は、ラジアー&ギブス(2017)を参考に、成果主義報酬やストックオプ…

報酬・昇進・評価の人事経済学1ー人材の努力が引き出されることで企業利益が最大化するメカニズム

これまでの人事経済学シリーズでは、働く個人も、人材を雇用する企業も、損得勘定に基づいて利益を最大化するように行動するという前提のもとで、どのような募集・採用選考、教育投資、人材維持・放出政策をとることが双方にとってハッピーな結果をもたらす…

「謙虚なリーダーシップ」がチームの「こころの資本」を育む

ob

以前本ブログで紹介した「心理資本(または心理的資本)」の翻訳版「こころの資本」が出版されました。日本でも心理的資本の重要性と有用性の理解が加速度的に高まることを期待します。過去のエントリーで復習しますと、心理的資本とは「以下の4つの特徴を持…

スピードが求められる時代でも「先延ばし」が有効な理由(わけ)

ob cr

変化の激しい現代のビジネス社会はスピードが求められる時代です。ビジネスや仕事でぐずぐず、もたもたすること、先延ばしすることは、ライバルに先を越されるわ、仕事の能率は下がるわで、百害あって一利なしと考える人が多いのかもしれません。みなさんも…

教育投資と人材維持の人事経済学2―人材価値の含み損状態を切り抜ける

前回のエントリーでは、企業と人材とが共同で企業特殊的人的資本に投資し、それが成功して企業が持続的競争優位性を獲得し、それにより他社を上回る利益を上げ続けることができれば、企業も従業員も得をし、従業員は企業に留まり続けることを示しました。こ…

教育投資と人材維持の人事経済学1―企業も従業員も得する教育投資の方法

人事経済学の基本的な前提となっているのは、働く個人も、人材を雇用する企業も、利益(もしくは幸福)を最大化するように行動する、平たく言えば、損得勘定で行動するということです。これは、ヒト、モノ、カネといった3つの経営資源のうち、ヒトだけが、…

両利きの組織をどうやってつくるのか

OT

両利きの経営とは何でしょうか。加藤、オライリー、シェーデ (2020)によれば、両利きの経営とは、既存事業の「深堀り」(exploit)と新しい事業機会の「探索」(explore)を両立させる経営のことを指します。一般的に事業にはライフサイクルがあり、勃興、成長、…

募集と採用選考の人事経済学3―常に費用対効果で考える

今回も、ラジアーとギブス(2017)を参考に、募集と採用選考について、経済学的視点から考えてみます。企業が募集と採用選考を通して利益を最大化させるためには、常に費用対効果の視点から考えることが重要です。募集については、広告費用などをかけて、自社…

募集と採用選考の人事経済学2ーリスクコントロールで人的資源価値を最大化する

前回のエントリーでは、労働市場における情報の非対称性を逆手にとった工夫をすることで求職者の自己選択を促し、自然と自社にとって価値の高い人材のみが応募してくる仕組みをつくるロジックを説明しました。今回は、ラジアーとギブス(2017)を参考に、人材…

募集と採用選考の人事経済学1ー自己選択の促し方

以前のエントリーで、人事の経済学的理解とは、人事管理の仕組み(職務設計、採用、育成、賃金、評価など)によって、人間はどのように行動するのか(例、求職者はどのように就職活動するのか、従業員はどのように働くのか)。そして、その結果として企業は…

ジョブ・クラフティングの解剖学ーより深い理解のために

近年、組織や働き方の変化に伴い、ジョブ・クラフティングという概念への注目が高まっています。ジョブ・クラフティングとは、従業員が自らが担当する職務をより良いものに改善するプロセスを指し、従業員が主体的に行うジョブ・デザインとも言えます。これ…

内発的モチベーションの副作用にご用心

内発的モチベーションとは、何か別の目的のためではなく、それをすること自体を目的として何かを行おうとするモチベーションを指し、報酬のようなものに引っ張られるのではなく、それをすることが面白いから、楽しいから行うという側面が強いモチベーション…

なぜ戦略コンサルティングファームは超長時間労働から抜け出せなくなってしまったのか

戦略コンサルティングファームは、学部生や大学院生(MBAなど)の間で特に人気の就職先の1つだと言われています。しかし同時に、戦略コンサルティングファームは、一般では考えられないほど長時間働く職場であるという話も広がっています。近年、日本でも「…

人事組織に対する経済学的アプローチはほんとうに役に立つのか

経営学の分野でもとりわけ生身の人間を扱う組織行動論や人的資源管理論は、ベースとして心理学や社会心理学を用いる研究が支配的です。より人間関係に焦点を当てた社会学的アプローチも見られます。その理由としては、心理学や社会心理学は、人間の認知、感…

多国籍企業の言語戦略:ルオ=シェンカーモデルとは

多国籍企業は、様々な地域で事業を行っています。したがって、多国籍企業が使用する言語も多岐に渡ります。つまり、多国籍企業は、多言語企業であるということができます。言語は、企業内のコミュニケーション、コーディネーション、そして知識移転や共有に…