2011-01-01から1年間の記事一覧

働きやすい環境が生んだ長時間労働問題

わが国においては、従来から長時間労働が大きな問題となってきました。長時間労働が改善されないことが、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)や、女性活用などが進展しない要因となっているとも考えられています。この長時間労働問題は、皮肉にも日本…

事業構造の変化で人材が入れ替わる欧米企業、入れ替わらない日本企業

HRM

変化の激しい現代において、企業をとりまくビジネス環境が変化すれば、それに対応すべく自社の戦略や事業構造を変化させなければなりません。この戦略や事業構造の転換に伴う人材の動きについては、欧米と日本でかなり特徴が異なります。 欧米企業の特徴は、…

「学校から職場へのスムーズな移行」の本質

HRM

わが国では、少なくとも1990年ごろまでは、新卒一括採用による「学校から職場へのスムーズな移行」が雇用の特徴とされてきました。大企業を中心に、毎年4月入社の学卒新入社員を職務を特定することなく一括採用することによって、学生にとってみれば、学校…

主体性と適応性が共存するジョブ・クラフティング

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ジョブ・クラフティングとは、仕事に従事する従業員が、主体的に担当する仕事を再設計するような行動を指します。もう少し具体的に定義すれば「自分の行う仕事の中身(タスク)や範囲について物理的・認知的な変化を加えること」となります。そうすることに…

なぜ日本企業では仕事や成果と賃金がリンクしていないのか

HRM

濱口(2011)は、他の国と比べてもかなり特殊な日本的人事制度のあらゆる性格を生み出す原型となっているのが「職務限定のないメンバーシップ契約」であるという明快な視点を提供しています。つまり欧米などの他国では、職務要件に基づいて仕事を遂行すること…

人事のプロが語る「フェア・マネジメント」

労務行政研究所(編) (2011)では、人事のプロから働く人たちへの時代を生き抜くメッセージが収録されています。その中から、「フェア・マネジメント」に関するコメントを紹介したいと思います。 ソニーの元人事部統括部長の桐原氏は、ずっと「フェアネス(公…

日本の会社員が辞令1つでどこでもいくのは何故か

HRM

日本の会社員(古臭い言葉でいえばサラリーマン)は、会社からの辞令1つでどこにでも行く存在であるとみられています。大きな会社では、人事異動というのは1つのドラマであり、辞令が下りたら従わざるを得ません。また、残業をはじめとする長時間労働につ…

フェア・マネジメントの方法

日本の会社が戦略や人事改革、組織改革などで思い切った手を打てないのは、フェアネスに関する危惧からだと思います。思い切った手を打つ場合、従業員すべてにとってポジティブな結果を生む保障はありません。場合によっては、特定の従業員にとって残念な結…

フェア・マネジメントのススメ

スポーツの世界でもっとも大切なことの1つは、フェア・プレーの精神です。フェア・プレーなくしては、スポーツを行う選手も、それを観戦する人も、スポーツを楽しみ、それによって幸福な気分になることなどできません。スポーツマンシップとしてフェアであ…

仕事観や会社のイメージは日米でどう違うか

わが国でも、日本企業と外資系企業とでは、職場の雰囲気や社員の特徴がかなり違うと感じることがあります。例えば、日本企業で正社員として働いている場合、「明日に突然、解雇されるかもしれない」と考えるのはほぼ非現実的でしょう。それだけ、雇用の安定…

キャリアは意思決定の連なりである

職業人生もしくはキャリアをどのように理解すればよいのかについては、いろいろな見方、考え方があるでしょう。ここでは、キャリア(人生全体といってもよい)というのは、私たちが日々の生活において何かを選択し続けているプロセスとして理解することがで…

人事部員に適した人はどのような性格をしているのか

「企業は人なり」「人は最重要の経営資産」「モノ作りは人づくり」など、企業の人材マネジメントをつかさどる重要な部署が人事部門です。そこで働く人事プロフェッショナル、日本的にいえば「人事部員」は、どのような性格のひとが向いているのでしょうか。…

ワーク・ライフ・バランスという用語は適切なのか

wlb

仕事と家庭との関わりに関するイシューは、近年になりますます重要になってきています。そして、経営学や人事管理、組織行動論、産業・組織心理学などの分野においては、ワークとファミリーの関係性に関する研究は、メインストリームになりつつあります。し…

破壊的イノベーターの能力を身につける方法

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現代において、イノベーションこそが、製品を変え、サービスを変え、業界を変え、世界を変えていきます。とりわけ破壊的イノベーションは、既存の業界の常識を覆し、産業のパラダイムシフトにつながるでしょう。企業でいえば、スティーブ・ジョブズが率いて…

日本的組織・人事の成功要因

過去、日本的経営の3種の神器として「終身雇用」「年功序列」「企業内労働組合」を指摘したのは、ジェームズ・アベグレンでした。しかし、これらのように過去の日本企業の強さを支えた特徴が、機能不全を迎えていることは多くの識者によって指摘されてきま…

日本の大企業における出世の法則

HRM

わが国では、とりわけ昔の時代は、大企業に入社することは人生の成功を示唆していました。しかし、大切なのは、大企業のなかで課長、部長、取締役というように出世していくことです。大企業で出世する人すなわち「エラくなる人」はどんな人なのでしょうか。…

神経組織行動学の可能性

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組織行動学とは、組織における人間行動の特徴や法則性を解明することによって、組織のマネジメントに役立つ知識の蓄積を図ろうとする学問です。近年、この組織行動学にニューロサイエンス(神経科学)の知見を融合させようという試みが見られるようになりま…

日本企業が目指すべき経営・人事のグローバル化とは

近年、企業経営のグローバル化、および人材のグローバル化が頻繁に叫ばれるようになってきました。以前から、多くの企業がグローバルなレベルで競争していかざるをえないことはわかっていたことであり、ここ数年で急激に経営や人事のグローバル化がキーワー…

ネズミ講的組織論

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企業は規模的に成長しているときに最も組織が活性化すると考えられます。その後、十分に大きくなって大企業化してくると、いわゆる大企業病となって活気が停滞してくるでしょう。そして、活力を失った企業はやがて衰退していきます。このようなプロセスには…

「ルーチンワーク」はクリエイティビティを高める

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先の記事で、クリエイティビティの鍵を握るのは「無意識思考」であるという、無意識思考理論を紹介しました。 http://d.hatena.ne.jp/jinjisoshiki/20110715/1310719819 George (2007)は、この無意識思考が実際にクリエイティビティを高めることを示す研究結…

クリエイティビティの鍵を握る「無意識思考」

ob cr

現代のビジネスにおいて、新しいものを生み出す力であるクリエイティビティ(創造性)はこれまで以上に重要になってくると思われます。クリエイティビティはどのようにして起こるのか、あるいはどのようにして高めることができるのかを考えるとき、それを、…

悪いニュースはどれだけ採用活動にダメージを与えるか

HRM

企業の採用において重要なのは、いかにして学生や求職者に自社についての良いイメージを持ってもらうかということでしょう。学生や求職者は、限られた情報から、特定の企業についての初期イメージを形成します。そして、そういった初期企業イメージは「第一…

日本企業における「共同体的仕事配分」

HRM

日本的経営の大きな特徴として「共同体的仕事配分」というのがあります。これは、欧米のように、職務記述所を中心として個々人が明確に定義された職務を遂行する方法と大きく異なります。これが、採用から配置、教育、評価、報酬などの人事管理の仕組みにお…

資本市場における事業会社と投資銀行のネットワーク

古典的な経済学に対して、ネットワーク理論を志向する経済社会学者たちは、実際の市場経済では、ネットワークが重要な働きをしていることを指摘しています。その中でも、Barker (1990)は、金融資本市場において事業会社が資金調達を行う際の、投資銀行との関…

市場経済において企業は顧客の方を向いているわけではない

神の「見えざる手」を想定する古典的な経済学の場合、自由市場があって、そこに売り手(生産者、企業)と買い手(消費者、顧客)が集まり、売り手と買い手が価格交渉する結果、需要と供給が均衡する点で、製品のスペックや価格が決まると考えられています。 …

生産性を高める前に労働時間を劇的に減らす

ホワイトカラーの生産性問題、長時間労働問題は、以前から指摘されつづけられながらも解決が難しい、根が深い問題だといえます。そして、これらの問題は、ワーク・ライフ・バランスや従業員の健康といった問題とも絡んできます。たとえば、ワーク・ライフ・…

ドラッカーはなぜ経営学者ではないのか

最近「もし高校野球の女子マネージャーが・・・」という著作が流行し、経営学におけるピーター・ドラッカーの知名度がますます高まっています。ピーター・ドラッカーは、現代の企業経営やマネジメントに多大な影響を及ぼした経営思想家だといわれます。けれ…

大規模な組織間ネットワークはどのように進化するのか

組織間のネットワークは、いったん出現しそれが巨大化していくと、ネットワークに新たな組織が加わったり離脱したりと常にダイナミックに進化し、かつ複雑化していくと考えられます。では、こういった組織間ネットワークの進化は、どのような法則性に基づい…

役員兼任ネットワークの本質:企業はエリート階級の道具か

企業統治のシステムとして、社外取締役を多用するアメリカなどでは、企業のCEOなどの主要な役員が、他の企業の外部取締役を兼任することが多く見られます。これによって産業界で、役員兼任ネットワークが形成されていきます。役員兼任ネットワークは、組織間…

「直観」が優れた意思決定につながる条件は何か

ob dm

ビジネスや経営の実践において、直観的な意思決定が重要な役割を担うと考えられる一方で、直観は間違うことが多く、合理的な意思決定に劣るとする研究もあります。おそらく、どんな場合にも直観が優れた結果をもたらすわけではなく、直観が優れた意思決定に…