セレブ企業になる方法とその後

セレブ企業とは、主にメディアの働きによって世間から注目の的となる企業のことを指します。Rindova, PollockとHaywordは、セレブ企業を生み出すメディアの働きを説明すると共に、企業がセレブ企業になるための行動についても論じています。そのポイントは、メディアの関心をひきつけ、メディアが、産業や業界の変化といったような出来事をドラマ仕立てにし、そこに主役をあてがうことによって視聴者や読者の関心を惹こうとする行動をうまく助けるように、自社の行動やPR活動を調整し、自社イメージをうまく操作していくことだといえます。


自社が、ドラマ化された現実のストーリー中で主役の位置を占めるためには、他社とは際立って違っていなければなりません。それを作り出すのは、業界常識からの逸脱行動です。セレブ企業は、良い意味で業界他社と逸脱しているために世間の注目の的となるからです。もちろん、良い意味で逸脱しなければならないわけですが、その逸脱の方法にはいくつかの方向性があり、それに対する反応も異なるとRindovaらは説明します。そのひとつは、業界の規範や方向性をより際立たせるような形で逸脱する行動です。まさに模範生のような企業となることによって、世間からポジティブな評価を得れば、変革しつつある業界を牽引するリーダー企業のような位置づけになれるわけです。このタイプのセレブ企業は、業界の模範的リーダーであるがゆえに、比較的安定した地位を築くことができるといいます。


それに対して、業界のルールに故意に従わないような逸脱の仕方をする場合、それは単なるアウトローな企業と受け取られるリスクを負いますが、それがポジティブな評価につながれば、業界の反逆者、風雲児ととしてのヒーローのイメージを勝ち取ることができるでしょう。ただし、このタイプのセレブ企業は、評価が変わる可能性があるので不安定です。よって、反逆者や風雲児としてのセレブ企業は、セレブになったことで世間の注目を勝ち取り、多くのメリットを享受できた後は、徐々に業界の規範に従っていくことによって、セレブ性は失いつつも、まっとうな企業としての評判と正当性を獲得していくか、他の企業が模倣行動をはじめることによって業界の常識や規範が変わり、もはや反逆児でも風雲児でもなくなってくるということが考えられるのです。

文献

Rindova, V.P., Pollock, T.G. & Hayward, M.L.A. 2006. Celebrity firms: The social construction of market popularity. Academy of Management Review, 31: 50-71.