社会ネットワークの本質

クリスタキスとファウラー(2010)は、どんな規模のものであれ、社会ネットワークには2つの基本的性格があるといいます。1つ目は「つながりの構造」です。つまり、ネットワークを構成するとき、そこに含まれる人々をつなぐ絆には特定のパターンがあるといいます。2つ目は「伝染という機能」です。なにかが絆を経て流れていくということです。こうした流れは、独自のルールに従った動きをすることがあるといいます。この「つながりと伝染」が、社会ネットワークの「構造と機能」であるというわけです。


クリスタキスとファウラーは、さらに、社会ネットワークの構造と機能に関する5つのルールをあげています。1つ目のルールは、「私たちはネットワークを形作る」ということです。人間は絶え間なく社会ネットワークを念入りにつくったりつくり直したりしているということです。似たもの同志がつながったり、一人ひとりがどのようなネットワークをつくりたいかの指針を持って行動しています。その結果、複雑かつダイナミックなかたちで社会ネットワークがつくられているといえます。


社会ネットワークの2つ目のルールは、「ネットワークが私たちを形作る」ということです。つまり、私たちはネットワーク上でどんな位置を占めるかによって影響を受けています。ネットワーク上の構造的な位置づけによって、パワーを持ったり持たなかったり、行動が制約されたりするわけです。3つ目のルールは、「友人は私たちに影響を及ぼす」ということです。これは、つながりによってさまざまなものの受け渡しが行われる中で、相手から直接的な影響を受けるということを意味しています。さらに4つ目のルールは、「友人の友人の友人が私たちに影響を及ぼす」ということです。つまり、影響を受ける相手は、実は直接のつながりによる2者関係に限定されないということなのです。ネットワーク上で直接つながっていない相手からも、間接的な経路を通じて影響を受けているといえるのです。


そして5つ目のルールは、「ネットワークはそれ自身の命を持っている」ということです。社会ネットワークには、その内部の人々にはコントロールも認識もされない特性や機能が備わっているというのです。交通渋滞や、いろんなものが伝染していくような現象では、そのネットワーク上の個人がコントロールできるようなものではないということです。


クリスタキスとファウラーは、「6次の隔たりと3次の影響」という興味深い法則についても紹介しています。6次の隔たりというのは、この社会がどれだけ広く見えても、平均的に見ると6人を経れば、あらゆる2人が結びつくのだという「スモールワールド性」を示しています。3次の影響というのは、社会ネットワークでは、友人の友人の友人といった3次の隔たりまでは影響が及ぶが、それ以降は急速に影響力がなくなるということを示しています。