人材マネジメントの理想系

私たちは、自分のポテンシャルを最大限に発揮している状態であるとき、ある種の「至高体験」を味わうと言われています。自分のポテンシャルを最大限に出し切っている状態とは、自分の能力よりもちょっと高めの、チャレンジングな課題に立ち向かっているとき、たしかに苦しいけれども、その場で成長する実感を得て、それが幸福感にもつながる。フロー状態とも呼ばれるこの体験は、モチベーションの理想系でもあり、幸福感の理想系でもあるでしょう。


企業にとって理想的な人材マネジメントとは何かを考える際、このフローの原理に沿うならば、従業員の仕事環境を整え、適材適所を実現し、社員ひとりひとりが自分の持っているポテンシャルを最大限に発揮できる状況を作り出すことに他ならないでしょう。そして、人は仕事を通じて成長するともいわれます。何よりも、自分を成長させてくれるチャレンジングな仕事が、その人にとっての働き甲斐にもなるし、それは生きがいにもなり、良い仕事を与えられることこそが、非常にレベルの高い報酬だといえましょう。


そうなると、人材マネジメントをつかさどる経営者の責任は、従業員に一人一人に、そのようにチャレンジングで面白い、そしてやりがいのある仕事を与えられるかどうか、ということになると思います。チャレンジングな仕事を自分で見つけるところまで従業員に要求するのは酷というものです。まだ成長期にあって半人前でも、将来が期待される従業員だからこそ、経験豊富で実力も高いがゆえに企業の上層部にいるトップマネジメントが、彼らにとって魅力的な仕事を取ってきて(あるいは作り出して)与える責任があるのでしょう。まさに、トップセールスの精神です。


自分や家族の生存が脅かされないような経済的安定が確保されるべきであるのは当然として、それが確保されたうえで、自分にとってチャレンジングでやりがいのある仕事ができる環境、これこそが従業員にとって最高のご褒美であり、従業員のスキルアップを促進し、モチベーションを最大化させる理想系なのではないでしょうか。