「ルーチンワーク」はクリエイティビティを高める

先の記事で、クリエイティビティの鍵を握るのは「無意識思考」であるという、無意識思考理論を紹介しました。
http://d.hatena.ne.jp/jinjisoshiki/20110715/1310719819


George (2007)は、この無意識思考が実際にクリエイティビティを高めることを示す研究結果をいくつか紹介しています。その1つは、複雑なタスクを実行させる実験的研究で、無意識思考の助けを得ることがいかに成果を高めるかを実証しています。


具体的には、複雑な判断を必要とするタスクを遂行をさせる実験において(1)課題を提示した後にすぐさま判断をさせるグループ、(2)その課題について考える時間をある程度与えてから判断させるグループ、(3)2番目と同じ時間を与えるのだが、その間に課題とは関係のないタスクをさせるグループ、に無作為に分け、それぞれのグループの成果を調べました。その結果、課題と無関係な作業をさせたグループの成果が最も高いという結果を得ました。これは、意識していない状態でも課題への思考が進行しており、それは意識的に課題に取り組む思考よりも優っていたことを示すものです。


また別の研究では、複雑な課題を扱う仕事であっても、毎日の仕事の中に、頭を使わないようなルーチンワークを必ず定期的に実行することの重要性を示唆しています。このようなルーチンワークは、強制的に本人の意識を、対象となるタスクからそらす機能を担っています。つまり、意図的に「無意識思考」を作り出すわけです。そのことによって創造性を高め、課題の解決を有効にするというわけです。


創造性を高めるために「無意識思考」を活用するのには、例えば散歩をしてみたり、休暇をとって気分転換をしたりと、さまざまな手段が考えられます。つまり、ムダな時間、ぼんやりとする時間の効用です。しかし、もし重要でかつ非常に忙しい仕事をしている場合、そういった時間すら惜しくなるものです。そこで、頭をつかわないが、なおかつ必要なルーチンワークを、規則正しい時間帯に挿入することによって、散歩やぼんやり時間と同様の効果が得られるというわけです。


いわゆる「クリエイティブな人」のイメージからすると、規則正しい生活やルーチンワークは、クリエイティビティとは最も遠いものだと思われがちです。しかし、上手に活用すれば、むしろクリエイティビティを向上させることにつながると考えられるのです。

文献

George, J.M. 2007. Creativity in organizations. Academy of Management Annals, 1, 439-477.