フェア・マネジメントのススメ

スポーツの世界でもっとも大切なことの1つは、フェア・プレーの精神です。フェア・プレーなくしては、スポーツを行う選手も、それを観戦する人も、スポーツを楽しみ、それによって幸福な気分になることなどできません。スポーツマンシップとしてフェアであることはスポーツに携わる人間としての品性でもあり美学でもあります。フェアな競争を通じて初めて、誰もが納得するかたちで勝敗が決まり、そしてチャンピオンが決まります。負ければ悔しいですが、素直な気持ちで勝者をたたえることができるでしょう。


ひるがえって、企業経営についてはどうでしょうか。マネジメントの世界において、このフェア・プレーの精神が徹底しているでしょうか。フェアであることが大切なのは誰もがわかっていながらも、実際のマネジメントの場面では、フェアとは思えないことがしばしば起こるのではないでしょうか。そういうことがしばしば起これば、スポーツの選手や観戦と同様、従業員はやりきれない思いを抱くに違いありません。それは従業員の士気やコミットメントに悪影響を及ぼし、人材の活躍を通じた企業の発展を阻害する大きな要因となりましょう。


ではなぜ、スポーツの世界ではフェア・プレーを徹底することが可能なのに、会社の経営ではそれが難しいのでしょうか。それは、スポーツでは明確なルールが定められており、それが厳格に守られるのに対して、会社経営の場面では、マネジメントの実践や意思決定の手続きやルールにおいて曖昧な部分が多く、それがアンフェアだと思わせる扱いを生む原因となっているからだと思われます。


たしかに、会社の経営おける様々な場面において、客観的にフェアだと言えるルールを作ったり実行したりするのは困難かもしれません。しかし、フェアネスの基本精神に立ちかえれば、そういった困難を克服することは可能だと思われます。大事なのは、客観的にどうかというよりも、フェアだとみなが感じることができるかどうか、納得できるかどうかです。フェアネス(fairness: 公平)の同義語であるジャスティス(justice: 公正)は、正義という意味も含んでいます。マネジメントのフェア・プレーを推進するにあたって、人間尊重の精神、正義を追求する精神が前面に出ていれば、従業員はそれを感じ取ることができるでしょう。


フェア・プレーの精神を会社経営の根本的な理念に据え、トップ自らの率先垂範のもと、いかなる状況であろうともフェアであろうとする意志を貫こうとするならば、客観的にフェアなルール設定が困難な状況でも、社員の信頼を獲得することが可能となるのでしょう。