クリエイティブ精神の本質

フロリダ(2008)は、クリエイティビティ(創造性)は究極の経済資源であり、経済成長の原動力であるといいます。クリエイティビティは生産性を向上させ、生活水準を向上させる。とりわけ、科学者、技術者、建築家、デザイナー、作家、芸術家、音楽家、あるいはビジネス・教育・医療・法律などに携わる職務につき、その中心的な部分においてクリエイティビティを発揮することを求められているクリエイティブクラスと呼ばれる新しい階層は、社会の支配的な階層になっていると言うのです。では、クリエイティビティを生み出すための精神とは何でしょうか。


フロリダによれば、クリエイティビティは「知性」という言葉でくくられる複合的な能力からは独立した認知能力とされています。まず、クリエイティビティには統合する能力が含まれます。いろんなものを取捨選択して新たに有益な組み合わせを考え出す作業を示しています。さらに、クリエイティビティには自信とリスクを犯す能力が必要だといいます。「創造的破壊」という言葉もあるように、クリエイティブな精神はある意味破壊分子であることが多く、他人の批判や懐疑心も伴うため、それらに負けない自信とリスクを恐れない心が必要だというわけです。


また、クリエイティブな過程は不可解でとらえどころがないように見えるが、その根底には一貫した方法が存在するようであるとも述べています。例えば、クリエイティブな思考は「準備」「熟成」「啓示」「検証あるいは修正」といった4段階であることを示唆しています。つまり、準備としてまず課題を整理して正攻法で論理的に取り組み、次に意識下の精神と無意識とが定義しがたい方法でその問題について熟考する神秘的段階である熟成を経て、ひらめきや新しい統合が見える啓示が得られます。そして検証あるいは修正でその後の作業を行うといった具合です。


さらに、クリエイティビティは多面的で経験的なものであり、さまざまな関心や知識を示す精神と関連しているといいます。ただしクリエイティビティも労働であり、クリエイティブな精神は、修練、集中、血と汗のうえに成り立つのだとも述べています。つまり、クリエイティビティを発揮するには長い時間を要するし、何よりも内発的な動機付けが必要だと指摘します。そしてクリエイティビティはチームで発揮されることが多く、独自の社会環境において大きく花開くものだとも言います。