権力を得ることのほうがリーダーシップを身につけることよりも重要なワケ

著名な経営者の書いたリーダーシップの本はよく売れるし、経営学においてもリーダーシップのトピックはもてはやされます。多くの人がビジネスで成功するためにリーダーシップ能力を身につけたいと思うことでしょう。しかし、フェファー(2011)は、こうしたリーダーシップ本や講義・講演は眉つば物だと喝破します。なぜなら、自分のキャリアをお手本にしてリーダーシップを語る人々の多くが、トップに上り詰めるまでに経てきた抗争や駆け引きに触れないか、きれいごとでごまかしているからだと言います。このようなコメントによってフェファーは、そもそもトップに上り詰めるためには、地位や権力、影響力を手に入れるスキルの方が大切であることを暗に示しています。


要するにフェファーはわれわれに権力志向になることを勧めるわけです。その理由として(1)権力や地位があるほど長く健康に人生を楽しめる可能性が高い、(2)権力をもち、それに伴う高い知名度や地位を備えていればお金持ちになれる、(3)権力はリーダーシップの一部でもあり、何かを成し遂げるには欠かせない、ことをあげています。また、そもそも世の中は公正でないので、品行方正に生きていさえすれば必ず報われるというような考えは適切でないことを示唆します。こういった視点に基づき、フェファーは、権力や影響力を手に入れ、維持し、賢く使う方法について、学術的成果に基づくかたちで解説しています。


まず、権力を手に入れるためにはどのような資質が必要か。これについて、フェファーは、困難に挑戦しようとする強い意志と、その意志を目標達成につなげるスキルだと言います。前者には「決意」「エネルギー」「集中」があり、後者には「自己省察」「自信」「共感力」「闘争心」が挙げられます。また「出る杭」になることも重要だと言います。自分というブランドを確立し、売りこむということです。欲しいもの、必要なものはとりあえず頼んでみる。愛されるよりも恐れられるほうを選ぶ。また、無から有を生み出すことも重要だと言います。カネや人事権をはじめとする様々なリソースを握るために戦略的に工夫をするということです。ちょっとした手助け、社内外にコネを作る、組織のステータスを活用するなど、様々な方法が考えられます。


その他にも、権力を印象づける話し方や立ち居振る舞い、第一印象や自分のイメージづくりに気を使い、周りからの評判をよくしておくこと、他の人に褒めてもらうようにする、悪評をもうまく利用するなど、フェファーはさまざまな方法を紹介しています。