優れた経営戦略の鍵は「目標」にある

モンゴメリー(2014)は、優れた経営戦略とは何かを考える上で、会社に真の違いをもたらすのは「目標」であると説きます。モンゴメリーによれば、戦略とは、独自の方法で市場のニーズを満たし、利害関係者に利益をもたらすためのものですが、それは目標があって初めて生まれるものだといえます。戦略は目標から生まれ、目標を支えるものなのです。目標は会社の本質を語るとモンゴメリーはいいます。その会社がなぜ存在するのか、どのような独自性を備えているのか、他とどう違うのか、なぜ、誰にとって、重要なのか・・・といった疑問に答えるものが目標だといいます。つまり、企業の目標は、その企業が世の中にどのような価値をもたらしているかを語るものなのだというわけです。


では、良い目標とはどのようなものなのでしょう。モンゴメリーによれば、まず、良い目標は、すべての人を奮起し、品格や威厳を付与するような「気高いもの」です。次に、良い目標は「その企業の立ち位置をはっきりさせるもの」です。何をして、何をしないのか。どうなるべきで、どうなるべきでないのか、を明確するということです。さらに、良い目標は、「他社との違いを際立たせるもの」です。そして、良い目標は「価値創造と価値獲得の土台を作るもの」です。実際に、自社の目標が、他社との「決定的な違い」をもたらしている、つまりそのような結果が伴っているならば、それは良い目標だといえるとモンゴメリーはいいます。


さらにモンゴメリーは、企業の目標を支える価値システムを視覚化するための「戦略の輪」を提唱します。これは「どうすれば成功できるか」を図解したものでり、企業の存在意義、他社とどこが異なり、何が優れているかを示す目標を中心に描き、何をすればその約束が果たせるかを示す活動と資源を周縁部に描くものです。あらゆる組織には独自の目標があり、その目標を達成するための活動も異なるため、価値創造システムや戦略の輪は、それぞれ異なるはずだといいます。


そして、社内外に理念を伝えるために、戦略を簡潔な文言にまとめることをモンゴメリーは勧めます。自社の特徴と強みを、心に訴える具体的な言葉で伝えることです。優れた戦略は、簡潔で短い、具体的である、企業が何をしていて、なぜそれが重要か、読んだ人が自分の言葉で説明できる、決まり文句や曖昧な言葉がない、断定的だが気どりやうぬぼれがない、誰でもそれがその会社の戦略だとわかる、というような特徴を持っているといいます。現実に即した言葉、意味のある言葉だけを用いて核心をつくようにするわけです。


以上をまとめるならば、優れた戦略の特徴は、明確で説得力のある目標が土台となり、それに基づいて、本物の価値を付加し、明確な選択を行い、価値創造システムを創り、意味のある測定基準を持っており、そして核心に情熱があるものだとモンゴメリーはいうのです。