未来への動力をつくる「ビジョン」とはどのようなものか

近年脚光を浴びている「パーパス経営」と切っても切り離せないものが「ビジョン」です。佐宗(2023)によれば、パーパス経営の中でも、ビジョンは、究極的にどこを目指して進んでいくのかという「方向感覚」を示すものであり、企業理念浸透、パーパス経営の推進において、事業が惰性で回っている、社内に新しい取り組みに着手する活気がない、若手社員も目が死んでいる、といった課題がある場合には、「ビジョン」を通した推進力に欠けている状態だと指摘します。

 

ビジョンは、「私たちは将来、どんな景色を作り出したいか?見ていたいか?」という問いに対する答えであり、ビジョンの役割は、周りの人をワクワクさせ、創造性を刺激し、社員やパートナー企業を動かしていく推進力をつくることだと佐宗はいいます。共感・共鳴によってワクワクを生み出すことが必要なので、その景色は感性に訴えかける「絵」や「映像」などの視覚的な表現が適しているともいいます。

 

佐宗によれば、ビジョンとは言えないものの例が「目標」です。「売上規模〇兆円」のような目標は、ビジョンとは言えません。繰り返しますが、ビジョンであることの要件は、社員一人ひとりが、ビジョンが実現した状態をありありとイメージできて、それにワクワクし、毎日仕事にいくのが楽しみになるようなものです。そういう意味で、ビジョンは、がんばれば実現するかもしれない「夢」であると佐宗はいいます。あるいは、自分たちのがんばりで将来つくりだすことができる、ワクワクしながらありありと見ることができる「景色」だといいます。

 

ビジョンとは、自社を超えた多くの関係者からも共感を呼び、あらゆる資産を動かすものでもあると佐宗はいいます。夢を語れば、無形資産が集まる。無形資産が集まれば、有形資産が動くとも表現しています。ビジョンは「夢」「未来の社会の景色」なので、ビジョンが機能するために必要なのは、ステートメントではなく「物語」なのだといいます。では、どのようにしてワクワクするようなビジョンを作っていけばよいのでしょうか。以下のような佐宗は3つのポイントを挙げます。

 

1つ目は「解像度」です。ビジョンを作るためには、自分たちがワクワクする未来の景色をできるだけ具体的に表現する必要があるといいます。つまり、人の生活の細部まで、未来の景色の「解像度」を挙げたほうがワクワクが生まれやすいというわけです。2つ目は「広がり」です。ビジョンは、さまざまな関係者にとって自分ごと化してもらえるように広がりを意識するとよいといいます。例えば、自分たちの組織やビジネスにとっての未来の理想像という、自分たちしかワクワクできない未来よりも、社会や環境への影響まで考えたほうがよいというのです。そして3つ目は「時間軸」です。時間軸を長くとり、10年後よりも先の未来を考える、究極的には自分の死後や100年後でもよいといいます。そうすると、いまやっている事業にこだわる必要がなくなり、思い描くビジョンも変わってくると佐宗は指摘するのです。

参考文献

佐宗邦威 2023「理念経営2.0 ── 会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ」ダイヤモンド社

jinjisoshiki.hatenablog.com