ネットワーク効果のパラドクス:組織はどれくらいネットワークに埋め込まれるべきか

組織がネットワークでつながることのメリットはいろいろあります。この場合、ネットワーク上にいる組織は、ネットワークに「埋め込まれている」状態にあるといいます。ネットワークに埋め込まれていることが、その組織の行動を規定し、業績や生存率を左右すると考えられます。


Uzzi (1996)は、組織がネットワーク構造の中に埋め込まれている度合い(構造的埋め込み)を考えるさい、組織がネットワークに埋め込まれるほど、業績や生存率にとってプラスのメリットがでてくるが、ある閾値を越えてネットワークが密になりすぎると、逆にデメリットが出てくるため、構造的埋め込みの度合いと組織の業績や生存率との関係は、上に凸の曲線になることを理論化しました。


Uzziによれば、組織を取り巻くネットワークが密になるにつれて、単独で市場活動をする場合には得られないメリットが出てきます。ネットワークでつながった他組織との高度な情報交換や信頼関係の醸成、重要な資源やリスクの共有、そして協力的な関係に基づく共同問題解決などです。これらのメリットは、ネットワークに埋め込まれた組織の業績や生存率を高めることになるでしょう。一方、Uzziは、ネットワークが密になりすぎることのデメリットも説明します。たとえば、密で閉じたネットワークでは、ネットワーク内での情報交換にとどまるため、新たな情報がネットワーク外から入ってこなくなること、ネットワーク内の密な情報交換などから、ネットワーク内の組織が同質化してしまうこと、ゆえに、交換される情報や資源も同質化し、多様性がなくなること、さらに、同質化するがゆえに、外部環境変化に対しても変化抵抗が生じ、環境変化に適応できなくなってくることなどです。これらのデメリットは、組織の業績や生存率を低めることになるでしょう。


一方、ネットワークに頼らない市場活動もメリットがあります。ネットワーク内のつきあいに縛られることなく取引や情報交換ができたり、新しい情報を入手できたり、新たなネットワークパートナーの探索もできます。つまり、Uzziは、適度な密度のネットワークと、ネットワークを介さない市場活動の両者の組み合わせが、組織の業績や生存率をもっとも高めると論じるわけです。単独でネットワークにまったく埋め込まれないで市場活動をすることも、ネットワークにどっぷりと埋め込まれた状態になってしまうことも、どちらも好ましいわけではないということです。


このように、Uzziは、組織がネットワークに構造的に埋め込まれる度合いが高まれば高まるほど、組織の業績や生存率は高まっていくが、あるポイントを超えると、今度は逆に、ネットワークに構造的に埋め込まれる度合いが高まるほど、業績や生存率は低下すると論じ、それを実証的にも示しました。

文献

Uzzi, B. 1996. The source and consequences of embeddedness for the economic performance of organizations: The network effect. American Sociological Review, 61, 674-698.