大規模な組織間ネットワークはどのように進化するのか

組織間のネットワークは、いったん出現しそれが巨大化していくと、ネットワークに新たな組織が加わったり離脱したりと常にダイナミックに進化し、かつ複雑化していくと考えられます。では、こういった組織間ネットワークの進化は、どのような法則性に基づいて進化していくのでしょうか。とりわけ、ネットワークに新たに加わってくる組織は、どのような基準でどのような組織につながっていこうとするのでしょうか。


Powell, White, Koput & Owen-Smith (2004)は、こういった大規模な組織間ネットワークのダイナミックな進化プロセスを支配するつながりの論理として、4つの異なる論理を提案しました。1つ目は、「富むものはますます富む」という「蓄積利益の論理」で、これは新たに参加した組織が、すでに多くのつながりをもっている組織につながっていこうとする論理であり、「スケールフリー・ネットワーク」の理論が支持する論理です。例えば、twitterをはじめた人が、まず多くのフォロワーがいる人をフォローしてみようとする動きになぞらえます。多くのつながりをもっている組織が、ますます多くの新規参入組織からのつながりを得るというプロセスです。


Powellらの提唱する2つ目の論理は、「似たもの同志は惹かれあう」という「同種結合の論理」です。これは、自分の組織と類似した組織につながっていこうとするプロセスです。twitterでいうならば、自分と同じ学校に属する人、おなじ仕事をしている人をさがしてフォローしていこうとするようなプロセスです。そして、3つ目の論理は、「流れに従う」という「追従の論理」です。他の組織がどのようにつながりを作っているかを観察し、多くの組織が実行しているやりかたでつながりをつくっていこうとするプロセスです。


Powellらの4つめの論理は、「自分と違った相手とつながりを求める」ことに起因する、「多重結合の論理」です。これは、自分とは異なるさまざまな相手とつながることによって、新規性の高い情報を得たり、新しい機会を見つけ出したいという動機とつながっていると考えられます。


Powellらは、大規模な組織間ネットワークが進化するプロセスでは、上記にあげた4つの論理のうち、どれか1つが支配的な働きをするわけではないと論じます。つまり、上記の4つの論理の組み合わせによって大規模ネットワークが進化していくのであるが、その進化プロセスの段階によって、そしてその時点でのネットワークの状況や参加者の経験によって、特定の論理が多く見られるということがあると論じています。彼らは、米国におけるライフ・サイエンス分野において、多国籍製薬企業、研究機関、大学、バイオベンチャーベンチャーキャピタルなどがどのようにつながりを形成し、これらを含むライフ・サイエンス分野全体およびそれを形成する大規模ネットワークがどのように進化していったのかを分析することによって、彼らの考えを実証しました。

文献

Powell, W.W., D.R. White, K.W. Koput, & Jason Owen-Smith (2004). Network dynamics and field evolution: The growth of interorganizational collaboration in the life sciences. American Journal of Sociology. 110, 1132-1205.