破壊的イノベーターの能力を身につける方法

現代において、イノベーションこそが、製品を変え、サービスを変え、業界を変え、世界を変えていきます。とりわけ破壊的イノベーションは、既存の業界の常識を覆し、産業のパラダイムシフトにつながるでしょう。企業でいえば、スティーブ・ジョブズが率いてきたアップルは、イノベーティブな企業の筆頭にあがるでしょう。イノベーションは世界の経済、社会を活気づける原動力になるわけですが、どんなイノベーションも、最初は人々の革新的かつ創造的なアイデアから出発します。


では、このような革新的なアイデアを生み出すことができるのは、持って生まれた才能を持つ、特別な人だけなのでしょうか。たしかに、スティーブ・ジョブズなど類まれな才能を持った人物を見ているとそう感じるかもしれません。しかし、Dyer, Gregersen, & Christensen(2011)はそれを否定し、革新的なアイデアを生み出すスキルは、誰もが身につけることのできるものだといいます。彼らは丹念なリサーチに基づいて、イノベーティブになるためのスキルを特定したのです。彼らはこれを、破壊的イノベーションを生み出す「ディスカバリー・スキル(発見スキル)」と呼んでいます。


Dyerらによる破壊的イノベーションを生み出すディスカバリー・スキルは、認知的スキルとしての「連想思考(associative thinking)と、行動スキルとしての「クエスチョニング(問いかけ)」「オブザービング(観察)」「ネットワーキング」「エクスペリメンティング(実験)」によって成り立っています。つまり、特定の行動様式と思考方法を身につければ、誰でもイノベーティブなアイデアを生み出すことができるというわけです。


さらに大切なこととしては、ディスカバリー・スキルを構成する行動と思考を駆動するのは「現状をよしとしないマインド(questioning the status quo)」と、「リスクテイキング」だということです。現状に満足しないで、何か変えたい、新しくしたいという強い思いと、その思いの実現に向けて、少々のリスクを負うことをいとわない精神がなによりも大切だということです。


つまり、現状打破とリスクテイキングの精神が、物事に対する疑問、質問(何?なぜ?もし・・・だったら?)をたくさん問いかける行動や、現状をじっくりと観察してさまざまな洞察を得ようとする行動や、新しいアイデアや情報を得たり、意見交換をしたり、試したりするためのネットワーキング行動や、そして思いついたアイデアを試したり、新しい試みをやってみたりする行動を誘発します。


そのような行動を一貫して続けていると、さまざまな情報やアイデアが蓄積されるようになり、それが、ディスカバリーの認知スキルである「連想思考」の引き金になります。連想思考により、異なるアイデアが結びついてクリエイティブな解決策が生み出されたり、これまでなかった商品アイデアが生まれたりするというわけです。