人事部員に適した人はどのような性格をしているのか

「企業は人なり」「人は最重要の経営資産」「モノ作りは人づくり」など、企業の人材マネジメントをつかさどる重要な部署が人事部門です。そこで働く人事プロフェッショナル、日本的にいえば「人事部員」は、どのような性格のひとが向いているのでしょうか。楠木(2011)は、人事部門が担当するさまざまな機能によって、どのような性格の人が存在するのかについて述べています。


まず、異動や考課を担当する人事部員については、コミュニケーション能力とバランス感覚にすぐれた人が求められると楠木は指摘します。個々の社員の仕事人生に直接関係してくるだけに、細やかなコミュニケーションができるような性格の人がよいということなのでしょう。また、大企業の人事異動になってくると業務特性や社員の個別事情など非常に込み入った事情を考慮しながら計画する必要があるので、複雑な連立方程式を解くような作業が求められるといいます。よって、バランス感覚というのが重要だというわけです。


次に、社内の労働条件に関する業務を担当する人事部員の場合、労働協約就業規則などを管理する必要から、労働法規に関する代表的な判例も理解しておく必要があるといいます。つまり、法学部的な発想がフィットするのであり、法律家的な性格の人が求められることを示唆します。


労働組合との団体交渉を担当する人事部員は、当然ながら駆け引きや揉め事が嫌いでないタイプが多く、なかには煮ても焼いても食えない感じの人も多いと言います。原則論にこだわるよりも着地点を見ながら柔軟に交渉するしたたかさも求められていると言います。落ち着いた大人の雰囲気で議論するような人々で、これは明るく人懐っこいムードが前面に立つ研修担当や採用担当の集まりとは対照的だと指摘します。


人事制度の企画、立案を担当する人事部員は、制度の有効性を理論的に考えていく必要があることから、概念的な思考を好む傾向があると言います。特に大企業の場合、人事制度の改正の効果を社員に直接確認できないので、数値や理屈で正当性を根拠づけようとしがちであるため、そのような性格の人が多いのでしょう。勤務管理や給与管理は、縁の下の力持ち的な存在であり、地味だけれども毎日の積み重ねをしっかりとできる人が向いていることを示唆しています。


採用担当の人事部員は、明るくて感じのいい人が多いと楠木は指摘します。採用担当者の魅力が、応募してきた学生や中途入社の社会人をひきつける要素になるため、そうであるのが自然なのでしょう。採用担当の仕事は、基本的には社外の人が対象となるため、人事部の他の業務からは比較的独立しているとも言います。そして、研修を担当する人事部員は、明るく人懐っこいタイプが多いといいます。心理学やコーチンぐに関心を持っていたり、新入社員の成長を心から喜ぶなど、人に対して関心がある人が多いと指摘します。採用と同じく、他の仕事とは比較的独立しているそうです。