キャリアは意思決定の連なりである

職業人生もしくはキャリアをどのように理解すればよいのかについては、いろいろな見方、考え方があるでしょう。ここでは、キャリア(人生全体といってもよい)というのは、私たちが日々の生活において何かを選択し続けているプロセスとして理解することができるという考え方を提示します。


つまり、私たちは、毎日の生活において、いろいろな可能性(すなわち選択肢)の中から何か1つを選びとるということを繰り返していると考えられます。それは、ほんの些細なこと(ランチで何を食べようか)から、とても深刻なこと(会社を辞めようか、転職をしようか)まで、様々です。しかし、確実にいえるのは、私たちの人生やキャリアは、こういった意思決定、選択の鎖であるということです。


私たちは、日々の生活において何かを選びとると同時に、将来においてそういった選択肢の生成につながるような行動をしているともいえます。つまり、将来の選択肢を作り出す行動もしています。つまり私たちは、選択肢を作り出す行動と、選択肢の中から何かを選びとる行動を繰り返しているといえましょう。それが連鎖となって、人生やキャリアが展開していくのです。


実際、私たちの日常には、今後の人生やキャリアの展開にとって、限りない可能性やチャンスが転がっているかもしれません。しかし私たちは、そういった可能性やチャンスに気づくことなく、あるいは気づいたとしても、そういった選択肢を選ばないで、これまでと同じ、つまらない選択をしてしまっているのかもしれません。そうすると、私たちの人生やキャリアは、特に大きな変化を伴うわけでもなく、毎日毎日が淡々と過ぎていくことも考えられます。


日々の生活において、自分の身のまわりに起こること、すなわち選びとるべき選択肢は、自分の力ではコントロールできない要因と、自分が過去に巻いた種、すなわち過去の行動からくる要因とがミックスされてやってくると考えれれます。だから、実際、身の回りで起こることには意図せざることが多いのですが、これはら、まったくの偶然でもないし、100%自分の責任でもないといえます。言ってみれば、半分は運であり、半分は自己責任だといえるのではないでしょうか。もちろん、フィフティ・フィフティという意味ではなく、自分の責任と偶然性とがミックスされているということです。


これは、セレンディピティ(幸運をつかむ能力)や、計画された偶発性とも関連してきます。幸運をものにするためには、準備や構えが必要です。「幸運の女神には前髪しかない」という格言もあります。しかし同時に、幸運は待っているだけでは訪れないということも言えるでしょう。つまり「引き寄せ」の力です。確かに、幸運というのは偶発的な運かもしれないけれど、それはまったくの偶然ではなく、過去の自分の行いを反映しているのだと考えることもできましょう。


つまり、将来の選択肢となるべき種をまいておくことが大切だということです。日々の生活において、意識していろんな行動を行うことは、将来の選択肢を広げることにつながると考えられます。まいた種はかえってくるかわからないし、いつかえってくるかわかりません。けれども、たくさん種をまけば、そこから芽が出て、自分にかえってくる確率も高まるのではないでしょうか。