失業中の再就職活動におけるモチベーションとメンタルヘルス

失業中の再就職活動というのは、一般的には精神的に辛いプロセスでありましょう。厳しい状況で職探しをするためのモチベーションの維持が大切ですし、財政的にも苦しい中での焦りも出てくることから、メンタルヘルスの面で危機的状況に陥る可能性もあります。


Wanberg, Zhu, Kanfer, & Zhang (forthcoming)は、失業中の再就職活動プロセスに、モチベーションの特徴に関する個人差が影響するという視点から、失職後週カ月における活動を通じたアンケート調査を実施し、就職活動の強度とメンタルヘルス、および就職活動の成否を含めたダイナミックなプロセスを解明しようとしました。


Wanbergらは、モチベーションの特徴に関する個人差を、「接近型(approach oriantation)」と「回避型(avoidance orientation)」とに分類します。このモチベーションの違いは、自己規律プロセス(self-regulatory process)における、モチベーション・コントロールと、自己崩壊認知につながると論じます。接近型というのは、学習・成長志向の性格で、自分自身の成長や能力向上を目的として目標を立て、到達しようとする性格を意味します。一方、回避型というのは、成果志向、不安型目標志向ともいわれ、失敗をしないよう、自分自身にダメージを受けないよう、そして自分の義務感に基づいた目標を立て、到達しようとする性格を意味します。


Wanbergらは、接近型の性格をもった人は、失業中において、再就職活動強度は強く、メンタルヘルスも維持できると予測し、逆に回避型の性格をもった人は、失業中の再就職活動は低調であり、メンタルヘルスも悪化すると予測しました。そして、再就職活動の強度とメンタルヘルスは、再就職の成否を左右すると予測しました。さらに、そこには、自己規律プロセスが介在していると考えたのです。


接近型の人は、困難な状況に直面したときは「困難であればあるほどチャレンジするべきだ」ということを自分に言い聞かせる傾向にあると考えられます。よって、再就職活動中も、モチベーションを維持することができ、自己崩壊型の思考に陥りにくい傾向にあると予測されます。一方、回避型の人は、困難な状況に直面したときに、自己崩壊に陥り「だめだ、諦めよう」という気持ちになると考えられます。よって、再就職活動中も、モチベーションの維持が困難になったり、しばしば自己崩壊型の思考に陥ったりすると予測されます。この違いが、再就職活動の強度やメンタルヘルスに影響し、再就職活動の成否にも影響すると考えたわけです。


Wanbergらは、冒頭で述べたような実証研究を行い、上記のような予測の妥当性を確認しました。

文献

Wanberg, C. R., Zhu, J., Kanfer, R., & Zhang, Z. Forthcoming. After the pink slip: Applying dynamic motivation frameworks to the job search experience. Academy of Management Journal.