フェイスブックに学ぶ人材マネジメント

ソーシャルメディアの時代となり、SNS(Social Networking Sites)が一般化し、わが国でもmixitwitterfacebookなどのSNSが急速に会員数を増やし、日頃のコミュニケーションツールとして使われています。今回は、フェイスブックを例にとり、多くの人々がフェイスブック上で積極的に情報発信し、コミュニケーションをとっている様子から、企業の人材マネジメントが何を学ぶことができるかを考えてみたいと思います。


フェイスブックは2012年10月の時点で会員数が10億人を超え、国のレベルでいえば、中国やインドに次ぐ巨大なコミュニティとなっています。これほどまでに人々がフェイスブックに加入する原因は何でしょうか。その1つの要因が、フェイスブックが持っているコミュニケーションを促進する仕掛けでしょう。それは、ブログのような情報発信を各人のタイムラインに流す機能、そこに自由にコメントができる機能、そして極めつけは「いいね!」ボタンでしょう。とくにコメントをするというところまでいかなくとも、仲間の発言をみて「それいいなあ」と思った時にボタン1つでその意思を表明できる「いいね!」ボタンは、フェイスブックを躍進させた大発明かもしれません。これにより、フェイスブックの会員は自分の発言に対して圧倒的に多くのフィードバックを得られる機会を得られたのです。


このような仕掛けなぜフェイスブック中毒にまでなるようなファンを魅了するのかといえば、フェイスブックのコミュニケーションの特徴というのは、端的にいえば、自分がちょっとした自慢をして、それがリアルタイムで仲間たちに伝わり、仲間たちが即座がそれを褒めるというプロセスだからでしょう。つまり、「ちょっとした自慢」と「いいね!と褒めあう」のセットが、フェイスブック上でのコミュニティを盛り上げる仕掛けなのだといえましょう。人間だれしも、自分が発言したことに対してすぐさまポジティブなフィードバックがあれば、嬉しいし、ますますフェイスブック上で発言しようとするのだと思います。そうなれば、コミュニティ内での議論が活発化し、盛り上がり、面白いアイデアもどんどん出てくることでしょう。逆に、自分が発言したことに対して何の反応もなく、黙殺される状況になるならば、誰も好んで発言を続けようとは思わないでしょう。


企業の人材マネジメントも、このフェイスブックの仕組みから多くのことを学びうるでしょう。それは単に企業内SNSのようなものを導入しなさいということではありません。問うべきなのは、企業の職場で、従業員が仕事仲間たちに対して「ちょっとした自慢」をし、それが職場内で共有され、即座に仲間たちがそれを「いいね!」と讃えるような職場風土ができているかということです。それができているような職場ならば、特別なIT技術など使わずとも、フェイスブック上のような活発でみなが元気になれるコミュニケーションができていることを示しているでしょう。


例えば、自分が今日仕事でこんないいことがあった、ちょっとした成功があった、こんな面白いアイデアを思いついた、あるいは逆に、がっかりした、少しへこんだ、といった出来事を、仲間に伝える。それが職場内に共有され、共感され、良いニュースならば仲間からいいね!と祝福される。そしてよくないニュースであれば多くの仲間から励ましの言葉をもらって勇気づけられる。こういったコミュニケーションがあるだけでも、職場の雰囲気、従業員のやる気、活発なコミュニケーション、面白いアイデアの創出、そして業績などが大きく変わってくるのではないでしょうか。


みなさんの職場はどうでしょうか。仕事で良いニュースやちょっと自慢したいことがあったときに、あたかもtwitterフェイスブックに投稿するかのように、すぐに職場に伝えたいと思うでしょうか。そうしたときに、それがすぐに仲間内で共有され、多くの「いいね!」をもらえると予想できるでしょうか。その結果、ちょっとハッピーな気分になる。また、職場の同僚が良いニュースを持ってきたときに、それを祝福する自分もちょっと幸せな気分になる、ちょっと辛い状況にある同僚がいたら、その痛みを分かち合い、なんとか解決してあげようと思う。そんなことが職場の日常で起こっているでしょうか。自信をもってイエスといえる場合は、よい風土を持った職場で働いており、従業員もそこで生き生きと働いているのではないでしょうか。