iPS細胞方式の日本型雇用とそれを支えた女性労働モデル

戦後の高度成長期を支えたのが、日本の社会システム全体と一体化するかたちで確立した日本的雇用システムです。濱口(2021)は、日本の大企業を中心に運用されてきた日本的雇用システムを特徴づけるのが、雇用契約上で職務が特定されず、雇用の本質が職務では…

コミュニケーション能力(コミュ力)という考え方が無効である理由

私たちが普段何気なく使う言葉に「能力」があります。仕事ができる従業員は、能力が高いからだと考えます。どのような能力が重要なのかといえば、例えば、採用場面では、「論理的思考力」や「コミュニケーション能力」が重視されるということが良く言われま…

量子論をベースとする新しい組織マネジメントとは

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今回は、量子論をベースとする新しい組織マネジメント論の可能性について考えてみたいと思います。これは、量子力学に代表される量子論が提案する新しい世界の存在の理解や、その認識の理解に基づいて、組織現象の存在や認識について考えてみようとするもの…

パーパス経営による自走型組織の作り方

森田(2022)は、経営者が細かく指示をしなくても社員が主体的に行動し、事業を前進させていくような組織を「自走型組織」と呼び、自走型組織を作ることは経営者にとって1つの理想であるといいます。自走型組織を支えるのは、自立型・自律型社員です。ただ、…

大企業病を打ち破る「複雑系リーダーシップ」2

前回のエントリーで、企業は創業期には生物のような野生の勘や生命力をもって探索、学習、成長、変化、進化を志向していたはずなのに、いつしか、機械のように安定、管理、秩序、持続、保守、現状維持を志向するようになり、それが大企業病につながることを…

大企業病を打ち破る「複雑系リーダーシップ」1

どのような企業にも創業期があります。一般的に創業期には企業規模は小さく、経営資源も限られていますが、創造性が発揮され、イノベーティブな事業や商品を生み出し、顧客や利害関係者、事業パートナーなどとの偶発的な出来事や関係性をうまくとらえること…

ニューサイエンスに学ぶ組織論5:変化の基本思想

組織変革は、組織マネジメントにおける最も本質的な活動もしくは現象の1つであり、多くの組織において課題や問題を抱えるテーマでもあります。組織を取り巻く環境は日々変化しており、その変化に対して組織も変化し適応し続けなければ組織は生き残っていけ…

ニューサイエンスに学ぶ組織論4:非線形性とカオス理論

西洋文明は、人間が機械など人工物の構築によって自然を征服するという構図で発展し、工業化社会が花開きました。その過程で中心を成した思想が機械論的な世界観であり、機械論的な組織観でした。そして、そのような思想を支えたのが、線形性という発想だと…

ニューサイエンスに学ぶ組織論3:創造エネルギーとしての情報

ニューサイエンスに学ぶ組織論2で議論したとおり、あらゆる生命体は、開放系としての散逸構造を持ち、自己組織化することで生命を維持しています。開放系としての生命体は、環境との相互交流を通して常に自分自身を作りかえながら、すなわち自己を創造し続…

ニューサイエンスに学ぶ組織論2:生命体的組織観と自己組織化プロセス

ウィートリー(2009)は、私たちが組織や組織のマネジメントのためにニューサイエンスの成果から何を学ぶことができるのかについて、生物学、物理学、化学、そして複数の分野にまたがる進化論やカオス理論といった分野で蓄積が進んでいる知識を紹介しながら解…

ニューサイエンスに学ぶ組織論1:量子力学的組織観と場の理論

私たちが組織を理解しようとするとき、例えばピラミッド構造の組織図をイメージするなど、部品からなる機械として捉えがちですし、組織をマネジメントしようとする際にも、組織を要素や機能に分解して問題のある箇所を見つけ、それを解決しようとしがちです…

異なる価値観を持つメンバーを束ねて組織の一体感を作り出す方法

パーパス経営を実践していくうえでカギとなるのが、組織メンバー全体に組織のパーパス、理念、ミッションなどが浸透し、組織メンバーが一丸となってその実現にむけて情熱を傾けられるような一体感、連帯感、帰属意識を醸成し、維持することだと考えられます…

パーパス経営への連帯感と感情エネルギーを生み出す儀礼的共有体験

パーパス経営がうまくいく場合、組織のメンバーは共有された目的やミッションの実現に向けた強い一体感と連帯感を経験し、場合によってはそれが宗教的でさえあるというような表現が当てはまることもあるかと思います。ある意味、強い組織には(良い意味で)…

パーパス経営を成功させる経営指標とはどんなものか

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組織マネジメントの観点から見た場合にパーパス経営の成否を握るのは、組織で働く人々がそのパーパスを自分ごととして捉えてその実現に向けたモチベーションを高めることができるか否かだと言えましょう。そして、それが可能となる条件は、企業のパーパスや…

何故「パーパス経営」が注目されるのか

パーパス経営とは、「私たちの企業はなぜ存在するのか」といった企業の存在意義、すなわち企業の究極的な目的(パーパス)を基軸にする経営だと理解されており、近年注目が集まっているコンセプトです。しかし、企業に存在意義や目的があるのは当たり前のこ…

派遣社員の積極的活用は業績を押し下げる。ではどうすればそれを防げるか

派遣社員を含む非正規雇用の労働力に占める割合は、日本においても正社員が中心であった高度成長期と比べるととりわけバブル崩壊以降、年々高まってきました。日本以外でも派遣社員の活用は広く普及しています。多くの人々は、企業が人件費負担を減らして業…

「パーパス経営」+「やってみせるリーダーシップ」の威力

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日本では有名な山本五十六の言葉に「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ」というものがあります。これはリーダーシップの本質を捉えていると思われますが、特に、最初に始まる「やってみせる」ことが重要であることに異を…

TEDで学ぶ組織行動論(22)アダム・グラント 「「与える人」と「奪う人」—あなたはどっち?」(日本語字幕付き)

TED Conferenceとは、TED(Technology Entertainment Design)が主催している講演会で、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物がプレゼンテーションを行なう場です。講演会の内容はインターネット上で無料で動画配信されており、多くの著名…

TEDで学ぶ組織行動論(21)エイミー・エドモンドソン 「他人同士の集まりをチームに変える方法」(日本語字幕付き)

TED Conferenceとは、TED(Technology Entertainment Design)が主催している講演会で、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物がプレゼンテーションを行なう場です。講演会の内容はインターネット上で無料で動画配信されており、多くの著名…

TEDで学ぶ組織行動論(20)リンダ・ヒル 「集団の創造性をマネジメントする」(日本語字幕付き)

TED Conferenceとは、TED(Technology Entertainment Design)が主催している講演会で、学術・エンターテイメント・デザインなど様々な分野の人物がプレゼンテーションを行なう場です。講演会の内容はインターネット上で無料で動画配信されており、多くの著名…

ジェンダー平等への圧力を阻む日本企業の職種間力学

社会においてジェンダー平等を実現していくことは今や世界の常識となっています。例えば、SDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)では、「5: ジェンダー平等を実現しよう」が謳われています。しかし、日本の企業社会におけるジェンダー…

ケネディ大統領のリーダーシップとNASAから学ぶパーパス経営

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「なぜ私たちの企業は存在するのか」といった企業の存在意義を中心とした経営を行う「パーパス経営」が注目を集めています。企業のメンバー全員が一体となって企業の究極的な目的であるパーパスの実現に向けて力を結集できるならば、それが企業の長期的な成…

パーパス経営その2:経営トップのビジョン形成力を阻害する要因をどう克服できるか

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近年注目が集まっている「パーパス経営」を実践していくうえで経営トップに求められる重要な役割が、企業のパーパスを従業員に明確に伝え、共有を促し、その実現に向けて組織内のあらゆる勢力を結集させるよう導くことです。その際に必要不可欠なのが、トッ…

「パーパス経営」を成功させるトップのビジョン形成力とは

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近年、企業の存在意義といった目的(パーパス)を基軸とする「パーパス経営」への注目が高まっています。これはまさに、なぜ企業が存在するのかや企業経営の本質とは何かを言い当てるような思想であり、至極まっとうな考え方であるといえましょう。しかしな…

新型コロナ危機にも屈しない「レジリエント」な企業とは

新型コロナ危機は2020年初頭より本格化し、世界中でワクチン接種が進んでいるにもかかわらず2021年現在、いまだ収束の見通しが立っていない状況です。そして、新型コロナ危機は、旅行業や飲食業などの特定の業種に対して非常に厳しい試練を与えているといえ…

中国IT企業の組織マネジメント

かつて日本企業は、メイド・イン・ジャパンの高品質な工業製品で世界市場を席巻し、高度成長を実現しました。高度成長を実現させ、世界経済におけるジャパン・アズ・ナンバーワンの地位を確立することができた背景には、戦後に確立した日本の雇用慣行や組織…

アジア系アメリカ人が企業業績の衰退時にリーダーに選ばれやすいのはなぜか

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アメリカ合衆国のビジネス社会における企業のトップマネジメント職位の大半を占めているのは白人男性です。これはこの国の歴史的背景や社会的特徴を考えれば容易に理解できます。一方、アジア系アメリカ人は、アメリカ国内でも平均的に見て学歴や収入が高い…

日本企業の競争力を支えた戦後日本型循環モデルの成功と劣化

第二次世界大戦後の日本は、戦後復興と高度経済成長という奇跡を謳歌し、その経済成長を支え、高品質な製品で世界の市場も席巻した日本企業の競争力、とりわけ雇用や人的資源管理のあり方は世界からの称賛の眼差しで迎え入れられました。これは、日本全体に…

生命科学から学ぶダイバーシティ・マネジメント

高橋(2021)は、生命科学の研究者として、そしてベンチャー企業の経営者として、「生命の原理や原則を客観的に理解した上で、それに抗うことで主観的な意志を生かして行動できる」と説きます。そうすれば、自然の理に立脚しながらも希望に満ちた自由な生き方…

組織設計の人事経済学「番外編」ーデジタルトランスフォーメーションはテイラー主義を復権させるのか

今回は、本ブログの人事経済学シリーズのうち「組織設計の人事経済学」の番外編として、デジタルトランスフォーメーション(DX)が、組織設計、職務設計、そして人々の働き方に与える影響について考えてみたいと思います。例によって、ラジアー & ギブズ (…