2011-01-01から1年間の記事一覧

経営意思決定における「直観」とは何か

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昔から、「直観」はミステリアスなものとしてしばしば捉えられます。ビジネスや経営でいれば、経営の「勘」のようなものが重視されたりします。一方で、こういった「勘」は頼りにならず、合理的判断が必要だという説もあります。では、そもそも直観とは何な…

弱い紐帯の強さのパラドクス

今回は、ネットワーク理論や社会学ではあまりにも有名な、グラノベッターの「弱い紐帯の強み」を紹介します。人と人とのつながりなどにおいて、連絡しあう情報の密度も頻度も低いようなつながりを、弱い紐帯と言います。親友が強い紐帯だとすれば、単なる知…

呉越同舟型提携ネットワークの競争力学

現代の組織にとって、他の組織との戦略的提携はなくてはならないオプションになりつつあります。しかも、競合他社同士が提携することも起こります。コーペティション(コーポレーション[協同」とコンペティション[競争]を組み合わせた造語)まで出てくる次第…

戦略的提携ネットワークにどう埋め込まれるべきか

組織同士が自発的に戦略的な協力関係を築くことを戦略的提携と呼びます。これによって、組織間のネットワークが形成されてくるわけですが、組織の競争力を高めるためには、どのようなネットワークを構築していけばよいかは重要な問いとなってきます。これは…

ソーシャル・キャピタルをネットワーク理論で読み解く

組織にしても個人にしても、「つながり」が競争力に直結します。人脈の豊富な人が出世しやすいというのは1つの分かりやすい例でしょう。このように、「つながり」が競争力の源泉(資本)となりうるという視点から概念化されてきたのが、「ソーシャル・キャ…

戦略コンサルタントの仕事術

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今回は、戦略系コンサルティングファームに在籍する知人との私的な会話などからヒントを得て、戦略コンサルティングの仕事の本質についての私見を紹介してみようと思います。近年になって、戦略系コンサルティングファームは就職希望先としても人気を博して…

プロフェッショナル・ファームの組織論

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組織には、一般事業会社や金融会社などがありますが、中でも近年において、優秀な人材が入社を希望することが多いのが、プロフェッショナル・ファームです。プロフェッショナル・ファームの例を挙げれば、伝統的なものとしては会計事務所や法律事務所があり…

戦略的提携はどのようにしてなされるか:ネットワーク理論による説明

ビジネスの世界では、企業どうしが戦略的な見地から、製品開発や市場浸透、その他さまざまな事柄においてお互いに協力しあう関係を樹立する「戦略的提携(アライアンス)」が増加してきました。戦略的提携では、お互いの組織が持つ資源を組み合わせて共同利…

起業家になる人と企業の管理職になる人との違いはどこから来るか

起業家も企業幹部や管理職も、ビジネスにおいて重要な役割を担います。しかし、起業家と管理職とでは、活動内容や求められる資質は異なることでしょう。では、起業を志向して起業家になる人と、企業組織に入社して管理職になる人では、どこが異なるのでしょ…

起業家精神は遺伝するのか

起業活動やベンチャービジネスというのは、国家の経済発展にとっても欠かせない活動です。起業活動が盛んになることによって、新たなビジネスや商品が次々と生みだされ、それによって富が増加するとともに人々の生活水準も向上していうからです。わが国でも…

ジョブ・クラフティングを促進する要因は何か

Wrzesniewski & Dutton (2001)は、従業員が、自ら主体的に担当する仕事を再設計するような行動を「ジョブ・クラフティング」と定義しました。クラフティングとは、工芸品を手作りでつくりあげていくような意味ですが、従業員が主体となって行うジョブ・デザ…

主体的に仕事をデザインする「ジョブ・クラフティング」

職場の心理学において有名な理論に、ジョブ・デザイン理論(職務設計理論)というものがあります。これは、人々をモチベートさせるのにもっとも重要なの要素の1つは仕事そのものであるとの前提に立ち、人々のモチベーションや生産性、満足感を高めるような…

ネットワーク効果のパラドクス:組織はどれくらいネットワークに埋め込まれるべきか

組織がネットワークでつながることのメリットはいろいろあります。この場合、ネットワーク上にいる組織は、ネットワークに「埋め込まれている」状態にあるといいます。ネットワークに埋め込まれていることが、その組織の行動を規定し、業績や生存率を左右す…

経営戦略論におけるネットワーク的視点の重要性

経営戦略論において最も人気のあるフレームワークは、ポーターのポジショニング・モデルと、バーニーのリソース・ベースト・ビュー(Resource-based view)でしょう。ポジショニングモデルは、業界構造の中で自社がどこに位置取るかが、競争優位性を獲得するう…

企業の非多角化(選択と集中)行動と証券アナリストとの関係

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アメリカではかつて、企業の事業多角化がもてはやされた時代があります。それに伴い、M&Aによって事業を切り売りしたり買収することがブームとなりました。それに対し、1980年代から90年代にかけては、多角化の解消による選択と集中、本業回帰の動きが増加し…

企業と「ご意見番」とのネットワークの重要性

一般的に、市場というと、商品やサービスを売る企業と、製品を買う顧客との交換関係として理解されがちです。しかし、商品やサービスによっては、顧客にとって品質を見極めるのが難しい場合があります。その場合、企業と顧客の間に、鑑定人、ご意見番、批評…

ネットワーク組織が普及しない条件

組織がアライアンスを組むなどネットワークでつながることのメリットはさまざまなものがあります。日本では、過去には財閥があり、現在でも系列や企業集団は一般的に存在し、組織間ネットワークを形成していることのメリットを享受しているといえましょう。…

ネットワーク組織の優位性

現代は、ネットワークの時代といってもいいかもしれません。それと呼応するように、ネットワーク組織(あるいは、ネットワーク型組織形態、組織間ネットワーク)という言葉もあります。直観的には、官僚制組織や純粋な市場経済とは一線を画す組織構造のよう…

市場の不確実性と企業のネットワーキング行動

企業が活動している市場においては、さまざまな不確実性に直面します。企業が不確実性に直面すると、不確実性を低減させようと行動します。経済学における取引コスト理論によれば、市場の不確実性が高まれば、市場における取引コストが増大するので、企業は…

ネットワークの構造的空隙効果対ステイタス効果

社会ネットワーク理論は、個人や組織が、自分にとって有利なネットワークを築くことによってさまざまなメリットや優位性が得られると示唆します。しかし、とりわけ市場経済のもとで活動する個人や組織にとって、いったいどのようなネットワークを構築するの…

つながりによって生み出される「ステイタス」

多くの学生が一流企業に就職したい理由は、そうすることによってステイタスが得られるからでしょう。同様に、一流大学に入学したいと思うのも、就職などに役立つステイタスが得られるからでしょう。このように、ネットワーク理論の視点からみると、ステイタ…

社会ネットワークの本質

クリスタキスとファウラー(2010)は、どんな規模のものであれ、社会ネットワークには2つの基本的性格があるといいます。1つ目は「つながりの構造」です。つまり、ネットワークを構成するとき、そこに含まれる人々をつなぐ絆には特定のパターンがあるといいま…

一流企業とセレブ企業はどう違うのか

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近年の組織論や戦略論では、企業の競争力を生み出す重要な資産として「無形資産」に注目します。たとえば、製品ブランドは、企業の売り上げや利益に貢献する無形資産であると考えられます。Pfarrer, Pollock & Ridova (2010)は、「企業の評判(reputation)」…

ネットワークの中心とはどういうことか

私たちの社会や組織をネットワークの視点で見るときに、直感的に重要だと思われる概念が「中心性」です。たとえば、自分がネットワークの中心にいれば、さまざまなメリットが得られ、他者よりも有利になると考えるでしょう。しかし、ネットワーク理論におけ…

組織論におけるネットワーク分析の視角

Zaheer, Gözübüyük & MILANOV (2010)は、組織論におけるネットワークの分析視角を、2者間(ダイアド)レベル、自己中心的(エゴ)レベル、ネットワーク全体のレベルに分類しています。ここでいうエゴというのは、自己中心的な性格という意味ではなく、特定…

組織論の新たな地平としてのネットワーク理論

近年、組織論の世界で急速に発展しているのが、ネットワークの視点です。一言でいうと、「ネットワーク」というレンズを使って、組織内で起こっている現象や、組織の振る舞い、組織間関係などについて理解していこうとする考え方です。 ネットワークの概念は…

従業員の助け合いを生み出す人事管理とは

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組織が協働システムである以上、企業で働く従業員同士が助け合うことが、企業業績にとって非常に重要です。わが国においても、成果主義の普及が従業員同士の協力関係を阻害してしまったという議論もあります。では、従業員が同僚に対して援助行動を積極的に…

セレブ企業になる方法とその後

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セレブ企業とは、主にメディアの働きによって世間から注目の的となる企業のことを指します。Rindova, PollockとHaywordは、セレブ企業を生み出すメディアの働きを説明すると共に、企業がセレブ企業になるための行動についても論じています。そのポイントは、…

セレブ企業の誕生プロセス

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現代では、世間において注目の的となって脚光を浴びる企業がしばしば出現します。そういった企業は「業界の風雲児」「変革の覇者」「時代を切り開く企業」のように、熱狂的もしくは羨望のまなざしで見られることもしばしばです。Rindova, PollackとHayward(2…

ワーク・ファミリー・コンフリクトと罪悪感:性別役割意識による影響

ワーク・ライフ・バランスは、近年の人事労務管理のキーワードとなっています。その理由が、従来のように、仕事を中心とした生活観を持っている社員ではなく、女性の社会進出や共働き夫婦の増加など、仕事以外の生活に時間が必要な社員が全体的に増えてきた…